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論題:2009年の農業情勢の展望

要旨

1 2008年における世界的な穀物需給逼迫の過程では,以下のような注目すべき動きが生じている。①農業資源の「有限性」に対する意識が高まり,ほとんど全ての穀物が同時的にかつ急速に上昇したこと,②多くの食料輸出国で輸出規制を行う動きが生じたこと,③多くの貧困国において食料供給に対する深刻な懸念が生じ,国際社会がそれに対する有効な対策を講じ得なかったこと等であり,これらは全て現在のWTO体制の枠組み自体に深刻な疑問を投げかけるものである。
2 穀物需給の今後の中・長期的な見通しに関しては,構造的な逼迫基調を主張する論者と,比較的楽観的な論者に分かれ,その結論を下すことは必ずしも容易ではないが,需給の不安定性は明らかに高まっており,政策的な対応はリスクを前提としたものとすべきであろう。
3 2008年においては各国において中期的な農業政策の見直しが実施された。(1)米国においては今後2013年までの農業政策の基本を定める2008年農業法が制定された。WTO交渉上も多くの非難をあびていた国内農業保護の枠組みを基本的に維持するなど,保護的な色彩が極めて強いものとなっており,対外政策と国内政策の矛盾が際立っている。(2)EUにおいては,2013年以降の共通農業政策(CAP)の中間見直しが実施され,直接支払い総額の抑制テンポの加速化,生乳の生産調整の廃止といった施策が合意された。これらは,EUの今後のWTO交渉上のポジションを強化するものであるが,直接支払いの減少テンポ拡大は,CAPの今後の方向性として注目されるものである。(3)中国においては改革開放後30年間における農業政策を評価し,今後の方向性を決定する党中央の文書が決議された。農業・農村問題を「最重要課題中の最重要課題」と位置づけ,国家による保護,市場メカニズムの導入,協同組織の強化等,総合的な対策をうたっているが,その円滑な遂行には多くの制約もあり,今後も難しい政策運営が要求されよう。
4 2009年においてはわが国においても「食料・農業・農村基本計画」の見直しが予定されており,世界的な食料需給の枠組み,各国の農業政策の方向性等も踏まえ,国民的な議論が必要となろう。今後の農業政策の方向性に関する一つの有力な主張として,自由化と直接支払いの組み合わせによるEU型の「市場開放論」があるが,わが国においてそれが有効に機能するものであるかについては極めて大きな疑問が残る。
5 今後のわが国の農業政策について,一刀両断的に全てを解決するといった方策はありえず,現状の政策をいかに実効あるものとして継続的に推進していくかが問われている。日本全体において社会的な不安が急速に高まるなか,農業・農村の有する社会的なセーフティネットとしての機能も,国民的な議論のなかで再確認されていくことが望まれる。

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http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0901re3.pdfPDF(108.8KB)

刊行年月日 2009年01月01日
更新日 2010年09月06日
掲載コーナー名 論調
著者
原 弘平(ハラ コウヘイ) :基礎研究部 取締役基礎研究部長
出版者・編者 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
掲載媒体 定期刊行物 『農林金融』
2009年01月号(第62巻第1号 通巻755号) 32~45ページ
掲載号目次 http://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2009-01.html
第一分野 (大区分):農林水産業・食料・環境  (詳細区分):国内農業
第二分野 (大区分):農林水産業・食料・環境  (詳細区分):国内農業
ISSN 1342-5749
キーワード 農業政策
 
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