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書誌情報

論題:大旱魃下におけるオーストラリア米生産の縮小要因―マランビジー川流域における灌漑水の割当と水取引―

10.04.30[ 更新10.09.06 ]

タイトル
大旱魃下におけるオーストラリア米生産の縮小要因―マランビジー川流域における灌漑水の割当と水取引―
要旨

1 オーストラリア南東部では過去10年に渡り乾燥した状態が続いている。この「大旱魃」により,オーストラリアの米の作付面積と生産量はピークであった2000/01年対比で1%強にまで縮小し(07/08年),現在も10.7%に留まっている(09/10年,作付面積)。こうした大幅な縮小は,灌漑水の割当減少と,他部門・地域への水割当の売却によるものである。
2 NSW州のマランビジー灌漑地区では,水源ダムの水量が減るとともに灌漑水(低優先順位)の割当が97年から削減され,06年以降は概ね水利権に対して20%以下に抑えられている。しかも年度当初における水の割当はさらに少なく,07年以降はゼロであった。優先順位の高いワイン用ブドウなど永年作物向けの灌漑水も,06年に割当が削減され,07年以降は年度当初の割当がゼロとなった。
3 しかも他の灌漑地域では水の割当がさらに少なく,年度中における割当の時期も遅れた。特にVic州とSA州の永年作物部門では水の追加購入需要が高まった。そのため水取引価格が上昇して,NSW州から水割当の売却が増加し,08/09年にはマランビジー川の割当量の4割程度が売却された。水を売却した米生産農家は,米の代わりに灌漑水の所要量が少ない小麦や大麦を作付けている。
4 米生産の本格的回復には水割当の回復と水取引価格の低下が必要である。ただし大旱魃が終息したとしても,環境用水の不足や水利権の過剰発行,長期的な降水量の減少見通しのため,灌漑水の割当はせいぜい本来の水利権の7~8割とされている。一方で80年代以降,土壌の保水力検査等により水の節約が進められている。水の供給制約と水利用効率のバランスが,今後の米生産回復を左右するであろう。
<表記:豪州(オーストラリア)、旱魃(干ばつ)>

刊行年月日
2010年05月01日
著者/
研究者紹介
平澤   明彦 (ヒラサワ アキヒコ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年05月号 第63巻 第5号 通巻771号  37 ~ 46ページ
掲載コーナー
外国事情
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/05/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
キーワード
マレー・ダーリング流域,リベリナ地方,水資源管理,水年度,サンライス社
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1005ab1.pdf  246.7KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/5.html