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書誌情報

論題:〈講演録〉アジアにおける食料安全保障の決定要因─制度の重要性─

17.07.31[ 更新18.03.20 ]

タイトル
〈講演録〉アジアにおける食料安全保障の決定要因─制度の重要性─
要旨

2017年3 月23日,農林中金総合研究所では豪州から来日した周章躍(ZHOU, Zhang-yue)教授による講演会を開催した。これはその記録である。本来の演題は「アジアにおける食料安全保障の不足―制度は重要か―」(Food Insecurity in Asia: Do Institutions Matter?)であるが,本誌への掲載にあたりわかりやすくするため若干改めた。
周教授は30年間以上にわたり豪州で研究を続けており,ジェームス・クック大学の教授を務めている。出身は中国の農村地域であり,中国における食生活の変化や食料安全保障,豪州農業などに関する著書がある。
2014年から15年にかけて,周教授はアジア数か国の研究者を集めて第二次大戦終結以後の食料安全保障政策に関する共同研究を行い,この夏には報告書の刊行を予定している。この講演は,その研究成果のうち,国別の研究結果を踏まえた周教授の国際比較分析によっている。講演時間の制約から,各国の事例については説明が大幅に省略されている。
本講演の主な主張は,各国の食料安全保障には,( 1 人当たりの所得水準だけでなく)腐敗や民主主義といった制度面の要因が大きな影響を及ぼす,ということである。また,周教授の専門分野を反映して中国に関する言及が多く,中国の国際的な位置づけを探求している感もある。日本の各種施策については成功例としておおむね好意的に評価している。
その一方,土地資源や人口による影響があまりないという分析結果は,読者にとって意外かもしれない。これは分析のアプローチによるところが大きいと考えられる。本講演の国際比較は各国における食料安全保障の実績に基づいており,特に後段の統計分析は現在の供給実績を対象としている。そのため,食料安全保障に対する潜在的な脅威やリスクについてはあまり注意が払われておらず,日本国内で通常なされる食料安全保障の議論とは視点が異なっている。しかし,周教授が実績を高く評価するイスラエルや日本の制度は,潜在的な脅威への対処や過去における食料不足の経験からつくられたものである点には注意を要する。資源など各種の制約があっても,それを政策により補い,あるいは克服して高水準の食料安全保障を実現した国と,していない国がある場合,そうした制約を統計分析で規定要因として検出するには別途の配慮が必要であろう。

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[講 演]周 章躍 : 豪州ジェームス・クック大学 教授,[編集・解題]平澤 明彦

刊行年月日
2017年08月01日
著者/
研究者紹介
平澤   明彦 (ヒラサワ アキヒコ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
周 章躍   (ZHOU Zhang-yue) (ツォウ ツァンギュエ) : 豪州ジェームス・クック大学 教授
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2017年08月号 第70巻 第8号 通巻858号  65 ~ 75ページ
掲載コーナー
講演録
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2017/08/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1708rec.pdf  802.7KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/6804.html