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書誌情報

論題:川下産業から見た国産材および森林組合系統

10.05.31[ 更新10.09.06 ]

タイトル
川下産業から見た国産材および森林組合系統
要旨

1 近年,経済発展の目覚ましい中国の木材需要の高まり等から,中・長期的な外材調達の安定性が懸念される状況となってきており,住宅産業や木材産業のいわゆる川下の木材ユーザーのなかで国産材への需要が徐々に高まりつつある。木材自給率は08年には24%と,最低だった02年と対比し5.8ポイント上昇している。
2 本稿は,このような状況下,住宅産業や木材産業の現時点での国産材の利用状況,国産材を利用するに当たっての課題,将来にわたる国産材側への期待等を数社の住宅メーカー,木材加工業者からヒアリングし,その概要紹介を中心に,川下産業から見た国内林業(国産材・林業・森林組合系統)について論じたものである。
3 ヒアリングの結果,住宅産業,木材産業ともに,国産材への関心が高まりつつあることが確認された。その背景となっているのは主に以下の2点である。第一は,外材の将来的な安定調達に対する懸念であり,量的な問題と同時に,為替相場の変動を含めた価格変動リスクに対する懸念も影響している。第二の背景は,国産材を利用することによるCSR効果であり,特に大手住宅メーカーではそうした意識が強い。また中堅住宅メーカーにおいては従来から国産材の取扱いが一定程度あったこともあり,動きが活発である。
4 しかし,国産材利用のさらなる拡大に向けては多くの問題点も指摘されている。第一に,その品質,価格が,依然外材に比較して競争力に劣る点である。品質面では,杉の横からの耐性の弱さといった構造的な問題に加え,国産材が客観的な基準を取得していることが少ないといった指摘も聞かれた。問題点の第二は,安定的な供給体制に関する問題で,森林組合系統に対しては効率的事業体質へ向けての自己変革の動きが十分ではないとの厳しい評価も聞かれた。
5 これらのヒアリング結果をふまえ,今後のわが国林業活性化に向けての課題をあげると以下のとおりである。第一に,新生産システム等,生産・流通の合理化に向けて,関係者の一層の努力が必要である点である。第二に,国産材利用のわが国森林資源維持に果たす役割について国民の理解を得ること,横耐性の弱さといった特性の克服に向けての研究促進等,国産材利用拡大に向けて一層の努力を行うことである。第三に,森林組合系統が新たな国産材時代への対応のため,近代的・効率的な組織として自己改革を遂げる必要があるという点である。森林所有者に最も近い森林組合系統に,国産材時代のリーダー的な存在を期待する声も多い。

刊行年月日
2010年06月01日
著者/
研究者紹介
秋山   孝臣 (アキヤマ タカオミ) :   専任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年06月号 第63巻 第6号 通巻772号  35 ~ 47ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/06/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):林業
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1006re3.pdf  84.4KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/12.html