書誌情報
論題:地方財政の抱えるリスク-財政再建準用団体等にみる財政悪化の背景から今後の地方財政運営の問題点を考察-
99.12.01[ 更新10.09.02 ]
- タイトル
- 地方財政の抱えるリスク-財政再建準用団体等にみる財政悪化の背景から今後の地方財政運営の問題点を考察-
- 要旨
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98年,国が財政構造改革法を早々と凍結し財政支出拡大を続ける中で,かつての富裕団体といわれた大阪府,東京都,神奈川県,愛知県が相次いで財政危機宣言を行った。地方自治体全体をみても,公共事業費削減に代表される歳出抑制の方向にあるのは確かである。これには,実質的な国の指導下に入る「財政再建準用団体」への転落を恐れているという背景がある。市町村財政よりも都道府県財政の方が,財政危機に陥りやすい。これは税収構造において,都道府県の税目が市町村に比して景気変動を受けやすいという特徴があるからである。一方で歳出構造をみると都道府県の方が義務的経費が多く,この矛盾が都道府県財政をより不安定なものとさせている。このような中で,各都道府県では従来削減が難しいといわれていた人件費までも削減を企図している。但し,財政危機を宣言した4都府県の近年の歳出状況をみると投資的経費の増大の方がより財政悪化に影響しているようである。80年代以降,財政再建準用団体を経験した4町(赤池町,香春町,方城町,金田町)について,同団体に指定されるまでの財政状況をみると,投資的経費の大きさとそれに伴う後年度の公債費の急騰という共通点がみられた。これは,地域振興のために行った公共投資が当該地域経済の発展には寄与せず,借金を累増させるだけに終わってしまった結果といえる。以上を踏まえると,本当の地方財政の危機はこれからである。バブル崩壊以後急増した公共投資の資金調達のため,多額の地方債が発行されたが,その元利償還費用は今後相当の負担となって財政運営に影響する。さらに,比較的に財政状況が安定していた地方交付税依存型の自治体にとっても,地方交付税制度自体に限界がみえてきた。目先のやりくりに翻弄されず,抜本的な地方財政改革が急務であろう。
VIEW MORE CLOSE - 刊行年月日
- 1999年12月01日
- 著者/
研究者紹介 -
丹羽 由夏 (タンバ ユカ) - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
1999年12月号 第52巻 第12号 通巻646号 21 ~ 33ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- 第二分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内経済
- キーワード
- 財政再建準用団体,財政危機,地方財政
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1265.html