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書誌情報

論題:WTO加盟の中国農業への影響-増大する農業調整の圧力-

00.06.01[ 更新10.09.02 ]

タイトル
WTO加盟の中国農業への影響-増大する農業調整の圧力-
要旨

1 WTO加盟の中国農政への主な影響として国内農業保護政策の転換があげられる。中国農業の比較生産性はこの十数年の高度経済成長の下で急速に劣位化した。農家の生産意欲の維持と農工間所得格差の縮小のため,94年ごろから中国は数千年にわたる農業収奪から農産物価格支持政策へと転換しつつある。しかし,国内農業保護の削減を条件とするWTOへの加盟はこの政策の継続を困難にする。 
2 そもそも約7割の農村人口を抱えている中国は,農産物価格支持政策を実施する経済力は備えていない。現実には,過重な財政負担によりWTOに加盟していないにもかかわらず,昨99年,自らこうした政策の転換を決めた。今後,農業の比較生産性と国際競争力の向上には,生産コストの引下げを図るしかない。その達成には,農業余剰労働力の農外移出,比較優位のある農産物の育成,農業技術の開発と基盤整備等が欠かせない。 
3 WTO加盟の中国農産物貿易への影響の一つは,穀物等農産物の輸入増と考えられる。非関税措置の関税化や関税率の引下げ等が加盟の条件となっている上に,中国の穀物等農産物の国内価格が既に国際価格より高くなっているためである。ただし,中国の穀物生産の半自給的性格,膨大な労働力の雇用の場,外貨事情,国際穀物の供給力制約などから,穀物の輸入増にも限界があり,長期的にみても高い国内自給率を維持せざるをえない。 
4 加盟によって,中国は加盟国の最恵国待遇を享受することができるようになり, 潜在的比較優位にある労働集約的農産物の輸出を促進させる可能性もある。あるいは促進しなければならないことと考えられる。99年に国際価格に比べて4~8割安い豚・牛・羊肉,リンゴ・梨等の果物のほかに,花きや農産加工等,穀物以外の労働集約的なものは潜在的比較優位にあるとみられる。

刊行年月日
2000年06月01日
著者/
研究者紹介
阮   蔚(Ruan Wei) (ルアン ウエイ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2000年06月号 第53巻 第6号 通巻652号  23 ~ 34ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2000/06/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):国内農業
キーワード
中国農政,WTO加盟,農産物貿易政策,農産物価格支持政策,国内農業保護政策,国内農業保護政策
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0006re2.pdf  285.1KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1295.html