書誌情報
論題:国際化のなかの韓国食品産業
04.07.01[ 更新10.09.02 ]
- タイトル
- 国際化のなかの韓国食品産業
- 要旨
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1 韓国の食品産業は,その農業と同様に徐々に自由化・国際化の波にさらされてきた。2004年4月からは韓国初のFTAがチリとの間で発効し,日本とのFTA交渉,WTO新多角化交渉も進んでいる。
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2 韓国食品製造業の総出荷額は,約4兆円と日本の約8分の1(人口は約3分の1強)の規模だが,外食産業市場規模とほぼ同額で,近年の生産額伸び率は製造業全体のそれを上回っており,業種別には「酪農製品等製造業」「肉・果菜・油脂加工業」が好調で,素材型の「穀物加工品・でん粉・飼料製造業」は相対的に低くなっている。
3 近年の韓国の食生活は,①洋風化・日本化(食の内容変化),②簡便化・外部化(食の形態変化)が急速に進展しており,外食産業売上高の最近5年間の伸び率は23%を超え,うち西洋式,日本式食堂の伸び率は40%を超えている。
4 農産物輸出を拡大している中国からの輸入が増加しており,食文化のシンボルであるキムチでさえ白菜・塩漬白菜を加えてみた輸入量は韓国内工場生産キムチ約50万トンの1割を超え,純輸入国に転化している。キムチの輸入単価は,韓国内工場卸売価格の3~4割弱にとどまる。
5 1次産品に近い素材型産業をみると,製粉,製糖産業は原料農産物の国内生産が僅少・皆無であること等から,大手7~8社の独占・寡占で,アメリカ等から原料を低関税で輸入・加工し,内需を満たした後の生産物を日本を含むアジアに輸出している。でん粉・でん粉糖産業も同様だが,馬鈴薯,甘薯の国内生産があることから,関税障壁による国内農産物,同加工品(でん粉)保護が行われている。
6 食品産業は,それぞれの国の農業との深いつながりのもとに成立しており,利害が必ずしも一致しないこともあるが,双方相まって一国の食料事情を形成しており,それぞれの保護・育成を図る観点が重要である。
7 韓国も日本もその国内食料・農業事情は,専業農家比率を除けば極めて似通っている。食料自給率は,主に第二次世界大戦後のアメリカの援助物資により縮小したものと考えられる小麦生産と,水田中心で飼料用穀物の生産量が少ないことを主因に,2002年で韓国47%,日本40%と低迷している。日韓FTAは,双方の国内食料・農業事情をよく理解し合い,その必要な保護・育成を確保していくものとする必要があろう。 - 刊行年月日
- 2004年07月01日
- 著者/
研究者紹介 -
藤野 信之 (フジノ ノブユキ) :基礎研究部 主席研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2004年07月号 第57巻 第7号 通巻701号 21 ~ 38ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):海外農業
- 第二分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):食品・フードシステム
- キーワード
- 韓国,食品,キムチ,食品産業,FTA,外食産業
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1653.html