書誌情報
論題:アメリカにおけるBSE発生と日米政府の対応
04.11.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- アメリカにおけるBSE発生と日米政府の対応
- 要旨
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アメリカの農務省(USDA)長官が2003年12月23日に行った牛海綿状脳症(BSE)発生に関する記者会見は,世界,特にアメリカ産牛肉に依存するわが国に大きな衝撃を与えた。長官は,12月9日にBSE感染が疑われた牛から採取されたサンプルがBSE陽性反応を示し,12月25日にはBSE検査結果が最終的に確定した。日本にとってアメリカはオーストラリアと並ぶ牛肉供給国であり,今回のBSE発生によってとりわけ外食産業が大きな影響を受けることになった。その後,日米両国で輸入再開に向けた交渉が行われ,日本政府は今年の9月に入って全頭検査を廃止して部分検査に移行することで輸入再開のための条件を緩和するという方向性を打ち出した。方向転換の根拠となる食品安全委員会の「中間とりまとめ」には幾つかの疑問点がある。BSE感染牛に関して,潜伏期間のどの時期(月齢)から発見できるのかという点については断片的な事実しか得られていないなかで,20か月以下を検査対象としないという決定はやや説得力を欠く。あくまでも現在の検査方法を使って,全頭検査において約350万頭を検査した結果,最も若い感染牛が21か月であったという事実のみに依拠しているだけで,科学的にBSEの発症メカニズムを解明した結果ではない。また,アメリカのBSE検査に関しても問題点が指摘されている。ひとつは,最初にBSE感染が確認された牛についてである。当初,USDAは,BSE感染牛はダウナー(歩行困難なへたり牛)と発表したが,その後USDAの主張とは異なる証言が出てきた。また,BSEの擬似感染牛を検査をしないで処分したことも明るみになった。USDAの管理体制に問題があると指摘されている。以上のような問題点があるにもかかわらず,日本政府は全頭検査を廃止して,アメリカからの輸入を再開しようとしているが,その場合でも問題がある。アメリカには日本のような個体識別制度がないため,牛の月齢の確認と特定危険部位の除去をどのように確実に実行するのかという問題が残されている。これに対して,USDAの既存のプログラムで証明できると説明しているが,細部については今後の交渉次第である。
VIEW MORE CLOSE - 刊行年月日
- 2004年11月01日
- 著者/
研究者紹介 -
大江 徹男 (オオエ テツオ) :調査第二部 主任研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2004年11月号 第57巻 第11号 通巻705号 2 ~ 13ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):国内農業
- 第二分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):海外農業
- キーワード
- BSE感染,アメリカの農務省,全頭検査
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1682.html