書誌情報
論題:米流通制度改革と米価の動向
05.03.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- 米流通制度改革と米価の動向
- 要旨
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1 2004年4月から改正食糧法が施行され,米政策改革のうち原則自由となる流通制度改革部分はほぼ完全に実施に移された。計画流通米制度は廃止され,政府米以外は原則的に米に流通法規制上の区分・規制が無くなった。とはいえ,流通の実態は,突然にいわゆる自由米市場が現出するような激変を伴うものではなく,従来からの自由化,流通改革の流れに沿った取引実態に即して展開されつつある
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2 米流通制度改革は,「米政策改革大綱」(02年12月農林水産省)が想定する4本柱の一つであり,食料・農業・農村基本法のベースにある「価格安定政策から市場原理の下での経営安定政策へ」の転換に則ったもので,現在検討中の食料・農業・農村基本計画見直しに連なるものとなる。
3 今回の米流通制度改革では米集荷等,中間(卸)流通,取引市場の局面で自由化が図られ,小売の局面では既にスーパー等量販店がバイイングパワーで米小売価格の低廉化を牽引している。備蓄・過剰米対策では,政府,自主流通法人(全農等)による備蓄・中央処理が行われていたが,過剰米対策は「集荷円滑化事業」として独立し,その処理は個々の生産者,農協等に分散されることとなった。
4 国内主食用米の長期的需給緩和状況に流通規制緩和も加わって米価は長期的に低下しており,04年産米のコメ価格センター全国年間加重平均指標価格(05年2月現在)は15,709円と16,000円を割り込む過去最安値となっている。
5 一方,米の生産費(60kg当たり)も作業委託の進展による家族労働費の減少等により低下傾向にあり,10年タームでは一定の生産効率化が進んでいるものと考えられる。米価と生産費等の対応状況(60kg当たり)を見ると,生産者マージン(稲作所得-家族労働費)は長期的に低下傾向にあり,全国平均ベースでは99年産米以降02年産米まで赤字となっている。これに「稲作経営安定対策(稲経)」のネット補填金を加味すると01年産を除いて黒字となり,稲経に一定の政策効果があったものといえる。04年産米からは,新たに「稲作所得基盤確保対策(稲得)」と「担い手経営安定対策(担経)」に衣替えされたが,担経の加入状況はその面積要件等の厳しさ等から約16万ha,約3万人,集落営農組織は200団体と少ないものとなった。
6 米価は今後とも傾向的には低下していく可能性をもっており,生産者サイドでは生産調整の的確な実施と,担い手への農地集積や集落営農組織等をてことした生産効率化をさらに進める一方,政策サイドには規模要件緩和等の幅広い経営安定対策が求められよう。 - 刊行年月日
- 2005年03月01日
- 著者/
研究者紹介 -
藤野 信之 (フジノ ノブユキ) :基礎研究部 主席研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2005年03月号 第58巻 第3号 通巻709号 36 ~ 51ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):食品・フードシステム
- 第二分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):国内農業
- キーワード
- 食糧法,米,コメ,米価,流通制度,米政策改革
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1714.html