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書誌情報

論題:地域金融機関と地方公共団体-指定金融機関業務の変化-

05.09.01[ 更新10.09.03 ]

タイトル
地域金融機関と地方公共団体-指定金融機関業務の変化-
要旨

近年,地方公共団体(以下「地公体」)と地域金融機関の関係が変化し始めている。従来,指定金融機関となった地域金融機関は,地公体を自らのイメージや信用力を維持し高めるための取引相手として重要視し,他の顧客には無い,手数料無料の収納や支払,全額金融機関側のコスト負担での派出などの特典を提供していた。しかし,地公体や金融機関双方を取り巻く経済金融環境が変化するなかで,取引の見直しが始まっている。地公体はペイオフ対策として預金保護のために,取引金融機関の財務経営内容のチェックを強化し,また一方で苦しい財政状況から,より効率的な資金調達運用への取組みが始まっている。金融機関側も高コストな経営体質の改善が急務となり,収益向上のために地公体取引も例外なく取引コストの軽減が大きな課題となっている。このため,従来地公体との役務取引は,そのほとんどが指定金融機関等の地域金融機関の負担で行われていたが,有料化を働きかける地方銀行等の取組みが顕著に見られるようになった。地公体との資金取引を量的側面から本稿後半部で紹介した。地公体への貸出金残高は,年々どの業態も増加している。貸出金残高の増大は,財政悪化の背景から地公体の借入が増えた点と,ペイオフ対策による公金預金保護の立場から,地公体が地方債を証券から公金預金と相殺しやすい証書へシフトさせたことが要因と考えられる。同様に,公金預金の減少も財政悪化による取り崩しとペイオフ対策のための運用の多様化(債券投資へのシフトや複数機関への分散)が指摘でき,財政悪化とペイオフ対策により貸出金残高と公金預金残高の接近がそれぞれの業態で起こっていると考えられる。資金取引が変化している一方で,大きな地公体,特に公募団体では,地方債の引き受けに証券会社等の参入が増え,全国的に収納業務にはコンビニや郵便局なども参加してきている。各々の取引ごとに採算を考えている主体が競合者となっていくなかでは,地公体とのすべての取引を総合的に考える指定金融機関をはじめとする地域金融機関は,取引の考え方を見直す時期にきているのかもしれない。地域的には資金取引も含め,強固な取引関係が継続しているところもあり,温度差が大きい問題ではあるが,経済金融環境や地公体,金融機関双方の直面する課題の変化に応じて,旧来の取引関係の見直し,再構築が必要となっていると考えられる。

刊行年月日
2005年09月01日
著者/
研究者紹介
丹羽   由夏 (タンバ ユカ)
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2005年09月号 第58巻 第9号 通巻715号  13 ~ 23ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2005/09/
第一分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):国内金融
第二分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):国内経済
キーワード
地域金融機関,地公体取引,貸出金残高
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0509re2.pdf  247.0KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1759.html