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書誌情報

論題:インドの食料需給と農産物貿易

06.08.01[ 更新10.09.03 ]

タイトル
インドの食料需給と農産物貿易
要旨

1 インドは70年代後半に食料自給を達成したが、人口10億人のなかに、いまだに2億人を超える貧困人口を抱える。またその農業は、引き続きモンスーン、天水の影響を大きく受ける。一方で、インドは90年代から2000年代にかけてコメ、小麦、砂糖の過剰に陥り、在庫圧力から輸出国に転じた。

2 これは、「緑の革命」等による生産力増を前提にして、インドが擁する公共配給制度(PDS)とその運用にも一因があるものと考えられる。

3 一方、食生活の高度化により食用油の需要が増大するなかで、94年に輸入自由化が行われ、インドは瞬く間に食用油の大量輸入国となり、天水畑地域での農業の衰退を招いている。

4 また、急速な都市化等により中間層が台頭し、伝統的な菜食中心の食生活から肉類、魚介類、油脂消費量が増加し、また加工食品需要が増大する傾向にある。トウモロコシの生産量に対する飼料用需要割合は2003年で41%に達した。

5 国内需給等に起因する輸出入品目であるコメ、小麦、砂糖について91年の経済改革以降の動向を見ると、コメは単収増、小麦は作付面積・単収増半々、砂糖は作付面積増を主因に生産量を増大させた。作付面積の維持・増加には最低支持価格(MSP)の上昇・維持が作用し、大幅な生産余剰と在庫圧力を生じた。
これらは、政府買入コストを下回る価格での輸出をもたらした。

6 インドの主要食料需給は、①短期的にはモンスーン、天水に大きく影響されながら、②中期的には公共配給制度(PDS)、ことにその価格政策に依存しつつ過剰基調にある。しかしながら、今後は人口増が生産増を上回ること等から大幅な余剰や輸出は無くなる可能性が高いものと考えられる。
  そして、インドは③長期的には、その人口増による食料需要増と、中間層の台頭による食生活の近代化、高度化による肉食増による穀物等の間接消費の増加等を、自力で賄っていけるかどうかという大きな課題に遭遇しつつあるものといえ、飼料用穀物の大宗を海外に依存する日本にとって、米中ともどもその動向について目の離せない先となろう。

刊行年月日
2006年08月01日
著者/
研究者紹介
藤野   信之 (フジノ ノブユキ) :基礎研究部   主任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2006年08月号 第59巻 第8号 通巻726号  41 ~ 52ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2006/08/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):食品・フードシステム
キーワード
インド,食料,穀物,貿易,食料自給,米
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0608re4.pdf  106.4KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1847.html