書誌情報
論題:中国におけるトウモロコシの需要変化-エタノール等工業需要の急増により加速する輸入国化-
07.09.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- 中国におけるトウモロコシの需要変化-エタノール等工業需要の急増により加速する輸入国化-
- 要旨
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1 中国のトウモロコシ需要構造は80年代半ばから大きく変化した。それ以前は主食としての消費が中心であったトウモロコシは,80年代半ばから飼料穀物としてのウェイトが急速に高まり,90年代半ばからアルコールやスターチ等工業原料,さらに近年では燃料エタノール原料としての利用が加わった。
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2 07年6月の中国の生鮮豚肉価格は前年同期比約70%も上昇した。豚肉を代表とする農産物価格の全面的上昇は,エタノール向けのトウモロコシ需要の拡大による飼料価格の上昇が主因だと指摘されている。エタノールの生産はこの2年間急増し,同様にスターチ等の工業需要も急拡大している。
3 中国の穀物によるエタノールの生産は膨大な古い在庫を消化するために02年に開始され,06年まで年間平均300%以上の伸びを示した。しかし,06年以降,原油価格の高騰を背景にエタノール工場設備着工等の申込殺到などの過熱が生じ,農産物価格の上昇を惹起した。それを懸念した当局は,06年末,穀物からのエタノール生産の拡大にストップをかけた。
4 一方,スターチ向けのトウモロコシ需要も近年急速に増加し,05年度にトウモロコシ総需要量の13.1%を占めるようになった。エタノールを含むアルコールやスターチの工業需要の拡大により,農家のトウモロコシ販売環境は大幅に改善し,トウモロコシ市場は買い手市場から売り手市場へと変化しつつある。
5 スターチは,食品,ブドウ糖などの糖類,ビール,医薬,製紙,染色,ペンキ等幅広い分野の重要な原料となっており,経済の発展とともにその消費も拡大している。中国の一人当たりのスターチ消費量はまだ先進国の10~20%の水準にあることから,今後も需要が伸びるであろう。
6 トウモロコシの生産は今後も増加するが,その増加率は需要の伸びに追いつかず2010年にかけて中国は輸入国化していく可能性が高い。中国の需要量が大きい上に,最大の輸出国である米国でのエタノール需要増による輸出余力低下が加わり,中国の輸入増によって世界の穀物需給関係が逼迫し,世界の農産物価格は新たなステージに入っていく可能性がある。 - 刊行年月日
- 2007年09月01日
- 著者/
研究者紹介 -
阮 蔚(Ruan Wei) (ルアン ウエイ) :基礎研究部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2007年09月号 第60巻 第9号 通巻739号 17 ~ 30ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):海外農業
- キーワード
- 中国,トウモロコシ,バイオエタノール,スターチ,アルコール,飼料原料
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1954.html