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書誌情報

論題:高まりつつあり中国の米州大陸への食料依存-穀物メジャーの参入で変わる中国・ブラジルの大豆産業-

08.03.01[ 更新10.09.06 ]

タイトル
高まりつつあり中国の米州大陸への食料依存-穀物メジャーの参入で変わる中国・ブラジルの大豆産業-
要旨

1 世界の穀物相場はこの2年間異常な高騰ぶりをみせているが,大量のファンドマネーが穀物の先物市場に流入したことが大きな要因の一つとなっている。先高感があるからこそ流入してくるという資金の本質から考えても,需給逼迫傾向の持続が前提とされているものといえよう。
2 世界の穀物需要に最も影響を与えたのは米国のエタノール向けの巨大なトウモロコシ需要であるが,次いで中国の大豆輸入である。中国は07年に世界総輸出量の45%にも当たる3,082万トンの大豆を輸入し,世界の穀物需要を押し上げた。この需要増に対して,米国,ブラジルとアルゼンチンは見事な増産で対応してきた。こうした増産能力は穀物生産における投資,技術,貿易の3要素が担保になるが,その背後には日本の技術協力や穀物メジャーの存在等がある。
3 中国輸入大豆の約99%は上記の3か国に頼っているが,特にブラジルからの輸入が急増している。ブラジルの大豆増産は,日本の協力によって農耕適地へ転身できたセラード地域における栽培面積の飛躍的な拡大によるものであるが,農家の作付拡大を実際に可能にさせたのは穀物メジャーが農家に生産資材を購入するための融資を行い,収穫物の大豆で融資を返済してもらう手法を取ったからである。メジャーは同時に,ブラジルの大豆原料を押さえた。
4 原料を手に入れた穀物メジャーは,最大の消費地である中国に順調に販売していくために,輸入大豆に頼る中国の搾油企業の買収等を通して,中国輸入大豆の約8割のシェアを押さえるようになった。中国市場をその世界貿易チェーンにはめ込んだ以上,穀物メジャーはその事業規模と利益の拡大を目指して,強い集荷能力と流通網を持っている米国やブラジルから中国への穀物輸出攻勢を強めることが考えられる。この意味で,穀物メジャーを通して中国の対米州大陸の食料依存が今後高まっていく可能性がある。
5 ブラジルは潜在的増産の余地が非常に大きいが,07年の大豆価格上昇はレアル高という為替の要因もあってブラジルの大豆栽培面積の拡大につながらなかった。これにより今後,穀物の供給拡大には価格のさらなる上昇が必要ということが示唆された。世界の穀物価格の上昇は日本農業再生のチャンスとも言え,国産小麦,大豆作拡大や飼料稲等の本格投入のための条件整備等の農業振興策が重要度を増してこよう。

刊行年月日
2008年03月01日
著者/
研究者紹介
阮   蔚(Ruan Wei) (ルアン ウエイ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2008年03月号 第61巻 第3号 通巻745号  15 ~ 29ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2008/03/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
キーワード
穀物相場,ファンドマネー,中国,大豆輸入,穀物メジャー,ブラジル
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0803re2.pdf  143.7KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1995.html