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書誌情報

論題:農業協同組合法制の課題と展望

09.10.01[ 更新16.08.02 ]

タイトル
農業協同組合法制の課題と展望
要旨

1 農業協同組合法の制度としての最大の特徴は,事業内容が広範であることに加え,組合
の運営に議決権等の行使を通じて直接参加できる正組合員のほかに,議決権等を有さない
准組合員制度を取り込んでいるという点にある。現実の農協が,その後の経済の発展過程
や経済政策を通じ,組合員基盤の非可逆的かつ構造的変化に遭遇し,その組織的,事業的
特質が非農業化あるいは異質化するというのは,必然である。
2 実態と建前の制度が乖離し,問題を惹起しているとすれば,見直さざるを得ないのは当
然であり,その見直しは,歴史的な経過の評価とともに歴史的事実を踏まえてなされる必
要がある。
3 過去の「地域協同組合論争」は,重要な論点を提示したが,現実的な展望を描けず,争
点の根底にあった准組合員問題は解決できなかった。
4 新自由主義によるグローバリズムは,農業・農村の疲弊をもたらした。農業・農村の持
続的発展のためには,農業を単に産業としてとらえるのではなく,その営まれる場を生産
空間と同時に生活空間として,総合的にとらえる視点が重要であり,農業,農村の多面的
価値を,社会的,経済的制度として埋め込むことであろう。そのために,農協に期待され
るべきは,単に狭い意味での農業者のためだけの,また単なる農業生産のための組織とい
ったことに加え,組合員の生産・生活の場である農村・地域社会の持続的発展に資すると
いった「公共的」,「公益的」役割の発揮であろう。
5 当面する解決すべき制度上の課題としては,「参加」の重要性ならびに協同組合が理念
に掲げる民主主義の観点に照らし,准組合員への一定の範囲での議決権等の付与,正組合
員資格の弾力化,多様な組合員の利害調整等のための分権的意思決定の仕組みの導入,定
款自治の拡大等があろう。
6 法制度が改められれば,課題が解決し,現実的な展望が開けるわけではない。JAグル
ープにとってのさしあたっての課題は,今回のJA全国大会議案にいう「『食と農』を軸と
した地域活性化」,「『農』を起点とした准組合員の加入促進」というところの,「農」とは
何か,その意味するところを明確にし,組織としてその事業活動の実践の理念として共有
化し,実践において具体化することであり,それを抜きに展望は開けないであろう。

刊行年月日
2009年10月01日
著者/
研究者紹介
明田   作 (アケダ ツクル) : 農林中央金庫JAバンク統括部主監
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2009年10月号 第62巻 第10号 通巻764号  34 ~ 44ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2009/10/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0910re3.pdf  81.7KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2135.html