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書誌情報

論題:大豆の国際需給と日本の自給

09.12.01[ 更新10.09.06 ]

タイトル
大豆の国際需給と日本の自給
要旨

1 国際的な大豆需給は,米州大陸による独占的大量生産・輸出と日中韓の東アジアおよびEUによる輸入という構造をもっている。この中では米州から中国へ向かうルートが最大で,穀物メジャーの介在度が大きい。この生産,輸出入構造は,主に80年代中盤以降のブラジル,アルゼンチンによる生産,輸出と,自給をあきらめた中国による輸入の急拡大によってもたらされた。
2 大豆,大豆油,大豆粕を加えた大豆製品全体で見ると,日中韓の東アジア3ヶ国で世界輸入量の43%を占めており,大規模生産による低価格性や,大豆が湿潤を嫌うこと等において一定の国際分業が成立している。東アジアでは大豆は大豆油原料だけでなく,豆腐,味噌・醤油等食用の大豆加工品原料となることから,GM大豆の問題もこのことを抜きには考えられないことにも留意する必要がある。
3 日本の輸入量は400万トンで世界輸入量の5%強を占め,大豆粕を含む大豆換算輸入量は600万トン強で世界輸入量の5%弱を占める。大豆と大豆粕の輸入関税は無税で,大豆油には13.2円/kg(従価税換算10.7%相当)の関税をかけて国内搾油産業を保護している。輸入量の増大に対応して大豆自給率は順次低下していき,現在では6.5%(食品用でも21%)と極めて低い水準にまでに至った。
4 作付面積は,米政策改革(04年度から)において適地適作化を促進する産地作り交付金制度を受けた転作が定着したこともあり,近年では堅調に推移している(08年では12万ha)。生産量は北海道,北九州,東北,北陸,中部で多く,品質(等級)では北陸で低いのが特徴的である。
5 大豆の価格は93年以降収穫量の増加と輸入品との競合によって長期的に低下傾向にあるなかで,10a当たり粗収益の低下スピードは生産費のそれを上回っており,農家所得はことに都府県で大きく減少してきている。都府県平均の所得が黄・緑ゲタ加算後でも赤字となることの主要因は,単収の低さにあるものと考えられる。
6 搾油用大豆生産の国際分業は一定の前提であり,分散と海外投資による調達先の安定化が必要である。国内食品用大豆生産に関しては,①一定の自給率の維持・拡大,②non-GM大豆の安定的確保,③構築済みの各地域の生産体制の維持のため,引き続き政策的な補助のもとにその生産量を維持・拡大していく必要があろう。また,国内の搾油産業が大豆油関税で保護され,大豆油,大豆粕の自給に貢献しているのを維持することが重要である。

刊行年月日
2009年12月01日
著者/
研究者紹介
藤野   信之 (フジノ ノブユキ) : リサーチ&ソリューション第2部   専任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2009年12月号 第62巻 第12号 通巻766号  36 ~ 53ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2009/12/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):国内農業
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
キーワード
大豆,需給,穀物,輸入,生産費,国際分業
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0912re3.pdf  209.1KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2154.html