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書誌情報

論題:水産エコラベル認証の現状と課題――水産における環境問題への新たなアプローチ――

10.10.01[ 更新10.10.01 ]

タイトル
水産エコラベル認証の現状と課題――水産における環境問題への新たなアプローチ――
要旨

1 限られた水産資源を利用し続けるために,漁業は環境問題との調和を求められている。過剰漁獲による水産資源の枯渇が大きな問題となるなか,水産資源を持続的に維持していくためには,漁業者のみならず一般消費者を含めた取組みと理解が不可欠である。水産エコラベル認証は,消費者にメッセージを発する手段として重要性を増している。
2 FAO(国連食糧農業機関)は,環境と調和した持続的な水産資源の利用や生態系の保全に関する一般原則を提起し,水産エコラベル認証の枠組み形成を主導してきた。しかし,水産エコラベル認証の状況は各国の漁業事情や利害関係もあって,かなり複雑である。例えばEUでは,加盟国における水産エコラベル認証が遵守すべき要件を定めていこうというアプローチであり,国情を反映した認証制度が模索されている。
3 漁業は環境保護運動の影響を強く受けており,水産エコラベル認証についても環境や自然保護団体の活動が起点になっている場合が多い。環境NGO等を中心とした水産エコラベル認証は,生態系の保全や過剰漁獲の阻止,海洋の回復等の観点から普及をみており,その活動は年々影響力を増している。
4 日本独自の水産エコラベル認証として,2007年にMEL(マリンエコラベル)ジャパンが発足した。MELジャパンによる認証は,漁業管理の実態を踏まえて基準を作成し,審査を行うことを特徴としている。日本の漁業の特性に適した水産資源の管理のあり方と不可分の関係にあり,特に資源回復計画の取組みと関連している。
5 水産エコラベル認証は実際の認証があまり進んでいない現実がある。むしろ様々な利害関係があって,本来の理念を実現するまでにはいたっていない。また養殖業の認証や貿易との調和等の課題を抱えている。日本も水産物輸入国としての役割とともに,消費者を含めて,資源の無駄をなくし資源の維持・確保への貢献が求められる。
6 欧米諸国は環境政策や資源保護に戦略的な対応を進めており,環境に関する制度を次々に導入している。水産エコラベル認証は,水産資源管理や生態系保全の取組みの成果を認証として可視化するものである。水産資源の枯渇を防止し,持続的漁業を確立していくためには,漁業者のみならず消費者や流通加工業者を含めた総合的な施策が必要である。水産エコラベル認証もその一環としての位置付けと展開が望まれる。

刊行年月日
2010年10月01日
著者/
研究者紹介
鴻巣   正 (コウノス タダシ) :基礎研究部   専任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年10月号 第63巻 第10号 通巻776号  32 ~ 44ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/10/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):水産業
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):環境
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1010re3.pdf  94.9KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/3651.html