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書誌情報

論題:生物多様性問題の展開と方向性

10.10.01[ 更新10.10.01 ]

タイトル
生物多様性問題の展開と方向性
要旨

今日、生物多様性問題に社会的な関心が集まっている。本稿の目的は、国際社会と日本における生物多様性の動向を述べる中で、生物多様性問題が環境問題としての関心を集めている要因を明らかにすることである。国際的な動向を振り返ると、生物学者が自然保護の対象を広げるために作り出した生物多様性という言葉は、生物多様性が人類にとって多様な価値があることや国際的な政治や経済の問題と関係することを論拠として展開し、生物多様性条約として結実した。生物多様性問題は生物に関わる多様な問題を指すものとなったが、特に生態系サービスの概念などによって経済問題としての側面を強めながら、さらに多くの人々から関心を集めている。また、生物多様性の経済的側面に対しては、日本の経済界も大きな注目を寄せている。日本においては、生物多様性条約に基づいて政府主導で生物多様性問題が導入されたが、一方で二次的自然に関する生態学的な研究成果をもとに里山保全運動や農林水産業の動向と結びつき、独自の方向性を示してきた。地域社会で展開する生物多様性問題への取組みでは、地域社会が失ってきた価値の再生や地域における様々な問題の解決が目指されており、地域社会を基盤に活動する人々の関心を引きつけている。以上のように、生物多様性問題は、自然科学的な事実に基づきながらも、様々な価値や目的、問題を含むことによって社会的な注目を集めてきた。そして、多様な価値や目的の中でも、特に経済問題あるいは地域問題といった問題解釈の方向性が示されたことが、生物多様性問題に多くの人々の関心を引きつける要因となっている。今後も生物多様性問題を経済問題あるいは地域問題と捉える方向性が強まるにつれ、この問題はさらに多くの人々の関心を集めることになると思われる。

刊行年月日
2010年10月01日
著者/
研究者紹介
寺林   暁良 (テラバヤシ アキラ) : リサーチ&ソリューション第1部   主事研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年10月号 第63巻 第10号 通巻776号  2 ~ 14ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/10/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):環境
キーワード
生物多様性,構築主義,生態系サービス,里山
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1010re1.pdf  87.0KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/3653.html