書誌情報
論題:ミャンマーの稲作農業―「コメ輸出大国」の可能性と課題―
12.07.31[ 更新12.07.31 ]
- タイトル
- ミャンマーの稲作農業―「コメ輸出大国」の可能性と課題―
- 要旨
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1 民主化の進展等からミャンマーに対する関心が内外で高まっているが,ミャンマーはグローバル経済の最外縁に位置する低所得農業国であり,今後の経済発展も農業セクターの変化との関連でみていく必要がある。
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2 ミャンマーは多様な農産物を生産しているが,コメ,マメ類,油糧種子等が,特に重要な作物である。輸出農産物では,かつては世界最大のコメ輸出国であったが1960年代以降は衰退し,代わって90年代以降マメ類が最大の品目となっている。
3 ミャンマーの農業政策は,62~88年の社会主義期において,①農地国有制,②供出制,③計画栽培制が導入され,国家統制により生産余剰をほぼ吸い上げるシステムが採られた。88年以降の軍政期には,市場経済化の方向に転換するが,その実施は中途半端なものに終わった。コメについては,社会主義期に引き続き「低米価・安定供給」が政権基盤を維持するとの論理から統制的な色彩が残ったが,マメ類のように自由な取引が解禁された作物では生産は飛躍的に拡大した。
4 コメは70年代末にはミャンマー版「緑の革命」による単収の引上げ,90年代には乾期作の作付面積の拡大による増産政策が採られたが,さまざまな要因から十分な成果をあげることができなかった。政府のコメ統計への信頼性が低く,米国農務省(USDA)は04年以降,ミャンマーのコメ生産は絶対的な縮小過程にあるとみている。
5 ミャンマー政府は03年以降,コメ政策の自由化に踏み切ったが,輸出振興を視野に入れた増産に本格的に取り組むのは08年以降である。政府は輸出用の高品質米増産のために,米専業会社(RSC)の設立やハイブリッド米の導入を推進している。
6 ミャンマーが再びコメ輸出大国になるには,ハード,ソフトさまざまな条件をクリアする必要がある。しかし,現在のコメの輸出環境は厳しくなっており,コメ輸出の量的拡大を優先するのではなく,まず国内の生産基盤を整備し自給体制を長期的に確実なものにすることがより重要である。
P40ページ地図出典:工藤年博編『ミャンマー政治の実像 ?軍政23年の功罪と新政権のゆくえ?』より「ミャンマー地図」を利用(下記URL参照)
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Sensho/029.html
(アジア経済研究所 出版物・報告書
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/index.html) - 刊行年月日
- 2012年08月01日
- 著者/
研究者紹介 -
室屋 有宏 (ムロヤ アリヒロ) :基礎研究部 主任研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2012年08月号 第65巻 第8号 通巻798号 38 ~ 55ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):海外農業
- キーワード
- ミャンマー,ミャンマー農業,稲作,コメ輸出,農業政策,コメ専業会社
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/4411.html