農林中金総合研究所

農業政策金融機関である中国農業発展銀行は，設立後食糧買付資金の融資が中心であったが，2004年以降，農業・農村の基盤整備のための融資が再び登場したほか，食糧企業以外の企業に対する融資もつけ加えられ，同行の融資対象が多様化するとともに，融資額も急速なテンポで増加を続けている。
本稿では，同行発足後21年間の融資内容を独自に整理・分類し，時期に分けてその実態や問題点を分析し，同行が食糧買付資金の融資によって食糧生産・流通の円滑化を図る上で重要性を持つだけではなく，農業・農村の基盤整備のための融資の増加などによって農業・農村の資金不足の緩和にも寄与したことを明らかにした。また，同行が抱える未回収融資の問題を明示したほか，同行の改革に関する議論の経緯や現在の改革案についても整理した。
最後に同行の望ましい方向に向かうための論点も提示した。まず大企業への融資は，民間金融に任せるべきという世論を意識する必要があろう。また，同行は農業・農村基盤整備を支える政策金融の機能を強化しながら，農業経営主体の変化を考慮した融資を検討することも必要と考えられる。