農林中金総合研究所

JAの「自己改革」は「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」が3 本柱である。このうち地域活性化に関する取組みは多様であり，それゆえに成果も見えづらいが，少子高齢化と人口減少で地域がさまざまな難題を抱える今「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」としてのJAが担うべき役割は大きい。
政府・与党の農協改革論議は，営農・経済以外の事業を別組織化あるいは代理店化によってJA本体から切り離す方向で進められてきた。これは総合農協の解体につながる流れであり，先送りされた准組合員の利用制限論議とも表裏一体の関係にある。
一方，JAグループは総合事業を通じて正・准の垣根を超えた組合員の結束を強化し，他の協同組合や住民組織，行政などと連携して地域の課題に取り組むことを追求してきた。その原点は1970年の「生活基本構想」と85年の「農協生活活動基本方針」にあり，組合員のボランティア（JA助けあい組織）による高齢者福祉活動などとして，具体的に展開されてきた。
人口減少時代を迎えた今，地域が抱える課題はますます複雑かつ困難なものになっている。そのなかで住民の暮らしを支える「地域運営組織」との連携，准組合員による援農ボランティア，子育て支援センターの開設や「子ども食堂」への協力など，新たな「つながり」の創出に取り組むJAが増えてきている。准組合員をはじめとした住民，地域を支える他組織との緊密な対話と連携を通じ、新しい「小さな協同」の芽を育むことが引き続き求められている。