農林中金総合研究所

EUにおいては、市場志向的政策のもと、食料サプライ・チェーンにおける農業者の地位を強めることが農業政策の大きなテーマの一つとなっている。
その一環として、農業生産者の組織化によるサプライ・チェーンにおける生産者の地位と交渉力の強化のための施策として、競争法の適用免除の枠組みの整備・拡充もすすめられてきている。
EUでは、判例上も農業協同組合については肯定的な評価がなされ、CMO規則が同じ機能を備える農業生産者の組織を競争政策のなかに適正に位置づけているが、わが国では競争法（独占禁止法）の適用除外制度が協同組合一般を対象にしていることにも起因し、競争法の解釈・運用が農業・農産物の特性や市場構造さらには農業協同組合の組織特性を十分考慮したものとはなっていない。
競争当局に求められるべきは、農業協同組合の内部の行為の監視というよりは、むしろ農業生産者に対する公正な利益の帰属と競争法の最終的な目的である消費者の利益の確保という視点から、農産物の小売市場を含めサプライ・チェーン全体を通じた現状と問題点の解明を通じ、農産物市場全体を監視することであろう。