農林中金総合研究所

中国では、温室効果ガス（GHG）の排出削減に向けては、カーボンインクルージョンの推進の一環として「個人カーボンアカウント」（PCA）という試みを実施している。PCAは、個人のGHG排出削減の状況の表示、削減量に応じたインセンティブの付与等のナッジにより、個人のGHG排出削減に取り組むように促進するためのツールである。
本稿では、金融機関主導のPCAに焦点を当てて３つの事例を取り上げながらその推進状況を明らかにしたうえで成果や課題を整理した。
金融機関主導PCAの事例からは、個人のGHG排出削減にかかるデータの可視化やインセンティブ付与により、個人のGHG排出削減に対する意識の向上と行動変容につながっていることが分かる。また、今後の推進に向けて、連携の促進や排出削減量の算定基準の統一化を図ること、個人によるGHG削減分を排出量取引市場に組み込むこと、国による推進コスト負担への支援が必要であることを指摘した。