書誌情報
論題:漁協系統における組織整備と事業・経営の動向-信用事業を中心に-
03.04.01[ 更新10.06.18 ]
- タイトル
- 漁協系統における組織整備と事業・経営の動向-信用事業を中心に-
- 要旨
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漁協系統における組織整備は,組織・事業の強化を目的とした合併と信用事業体制の強化を目的とした信用事業統合という二つの形態で同時並行的に進められており,近年そのピッチを速めている。こうした動きは,水産業協同組合法の改正や「JFマリンバンク基本方針」の策定を契機にいっそう拍車がかかるものとみられる。本稿では,過渡期という微妙な時期ではあるが,こうした組織整備の影響や課題について検討する。
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信用事業の実績を貯金と貸出金という指標でとらえ,漁協,信漁連のネット合計ベースでの貯金や貸出金残高あるいは漁協利用率の推移からその状況をみた場合,現段階では組織整備の影響はみられない。すなわち,融資シェア上昇のなかでの貸出金の減少傾向は資金需要の減退によるものとみられ,また貯金における利用率にも組織整備動向と連動した動向はみられない等である。なお,信用事業統合率の高い県と低い県の貯金残高推移を比較しても特徴的な傾向はみられず,この点においても影響は認められない。
しかしながら,「3~5トン」漁船漁家等の特定漁業階層において漁協利用率の傾向的な低下がみられる。当該層は生産額のみならず,組合員構成においても大きなウェイトを占める階層であり,その意味では漁協の存立基盤にも深くかかわる問題だけに,事情の解明が急がれる。
漁協経営の面では,信用事業を実施している漁協と譲渡した漁協における各事業の労働生産性比較において,信用事業を譲渡した漁協に劣後性が認められる。他事業も含めた漁協全体の運営体制見直しが経営課題となっていることを示すものであり,漁協系統が掲げる「事業改革」と「経営改革」の必要性にもつながるものである。 - 刊行年月日
- 2003年04月01日
- 著者/
研究者紹介 -
出村 雅晴 (デムラ マサハル) :基礎研究部 主席研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2003年04月号 第56巻 第4号 通巻686号 49 ~ 61ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):漁協
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1532.html