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論題:戸別所得補償モデル対策の現場からの課題

10.05.31[ 更新10.09.06 ]

タイトル
戸別所得補償モデル対策の現場からの課題
要旨

1 民主党政権下での新しい農業政策として,2010年度に戸別所得補償モデル対策(以下「モデル対策」という)が導入された。本稿では,モデル対策の推進体制に関する課題,特に“地域”の位置づけの重要性に焦点をしぼり,これまでの生産調整との比較,現場での取組みや現場からの声を踏まえて検討する。
2 前対策との比較にみるモデル対策の最も大きな特徴は,政策の考え方として,これまで生産調整で進められてきた“地域”の取組みとして推進するという視点が希薄化していることにある。モデル対策には,前対策にみられた「地域が自らの課題を抽出し,計画を立て,それを施策の中に反映させていく」というプロセス,地域としての水田農業振興と国の施策とを一体として推進する仕組みは担保されていない。
3 しかし,地域の視点の希薄化には課題が多いとみられる。生産調整は①零細分散錯圃という条件のもとでの集団的,面的な取組み,②水田の高度利用を図るための地域単位での土地利用調整の高度化のための調整,といった地域としての取組みを土台として成立しており,政策の推進にあたっても,集落機能を活用する等,地域としての取組みが必要とされている。
4 これまで地域の取組みを推進する主体として位置づけられてきたのが地域の行政,農協等農業団体や農業者等により構成される地域水田農業推進協議会である。その役割は,これまでの政策の推移のなかで徐々に高められてきた。特に,近年,農業者団体主体の取組みとしての推進が強調されてきたことに加えて,市町村行政における農政の推進体制が弱まりをみせるなかで,地域水田協議会の事務局を農協が担う割合が急激に増加するなど,生産調整の推進において農協が担う役割が大きくなっている。
5 モデル対策の推進の現場からも,地域の視点の希薄化による懸念が指摘され,地域として取り組む仕組みや地域裁量の拡大を求める声が聞かれる。また,現場では,集落や地区等の自治能力を活かした取組みなど,地域の視点からの取組みを進める動きもみられる。
6 今後の戸別所得補償制度の本格実施にあたっては,もう一度地域の視点に着目し,制度の見直しが行われるべきであると考える。また,このように地域の取組みとして政策を推進していくことは,地域農業の振興にも通じていく。農協も,これまで以上に主体的,積極的に取組みを進めていくことが求められよう。

刊行年月日
2010年06月01日
著者/
研究者紹介
小針   美和 (コバリ ミワ) :調査第一部   主事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年06月号 第63巻 第6号 通巻772号  20 ~ 34ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/06/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):国内農業
第二分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1006re2.pdf  107.5KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/11.html