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書誌情報

論題:欧州における異業種の銀行業参入と銀行の総合金融戦略-新規参入による競合激化と伝統的な銀行の対抗策-

00.08.01[ 更新10.09.02 ]

タイトル
欧州における異業種の銀行業参入と銀行の総合金融戦略-新規参入による競合激化と伝統的な銀行の対抗策-
要旨

日本版金融ビッグバンの進展により,今後,銀行,保険会社,さらには金融機関という枠組みにとらわれず,総合的な金融サービスの提供が進展するとみられる。欧州では,既に金融機関の総合化,異業種の銀行業参入が進展しており,日本の今後を考える上で参考になる点も多いと思われる。
イギリスでは,異業種の参入による銀行間の競争が欧州で最も進展している。特に,スーパー等の小売業者と保険会社による参入が目立つ。同国で異業種の参入が進んだ理由としては,①技術の進歩により銀行の設立コストが低下したこと,②イギリスのリテール銀行業務の収益性が高いという共通要因に加え,小売業者には,①クレジットカードを発行したい,②顧客データを把握したいというニーズ,③イギリスではスーパーに対して親しみやすさを感じる人が特に多いという理由があった。また,保険会社には,①保険金の満期金対策,②保険業をめぐる環境の変化という要因があった。
異業種によって設立された銀行の特徴は,①親会社のブランド力を武器に顧客を獲得している,②有利な金利を提示,③提供している商品の種類が限られていることである。また,誰に対しても同じ金利を提示し,公平性をアピールしている。このような点は,言い換えれば,伝統的な銀行が利用者にアピールできていなかった点だと考えることができる。新規参入者の市場シェアは預金で5.0%,住宅ローンの残高では1.0%,ただし新規の貸付では11.5%を占める。
異業種によって設立された銀行の参入により,銀行市場における競争は激化してきている。これに対して伝統的な銀行は,①リテール部門におけるアルフィナンツ(総合金融)戦略の再構築,②支店,電話,インターネット,TV,携帯電話等,様々なデリバリーチャネルで金融商品を提供するマルチチャネル戦略,③小売業者の経験を取り入れることにより対抗している。
今後の動向を考えると,総合的に金融商品の提供を行う金融機関にとっては,金融商品のクロスセルをいかに効果的に行うかということが重要な課題となろう。また,支払手段として多用されている現金がどの程度電子的な媒体に置き換わるかということも,利用者の金融機関の利用状況に影響を与えるとみられる。

刊行年月日
2000年08月01日
著者/
研究者紹介
重頭   ユカリ (シゲトウ ユカリ) : リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2000年08月号 第53巻 第8号 通巻654号  16 ~ 35ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2000/08/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):海外協同組織金融機関
キーワード
異業種,銀行業参入
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0008re2.pdf  201.3KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1305.html