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書誌情報

論題:多様化する農協の販売事業方式-3農協の事例より-

02.02.01[ 更新10.06.18 ]

タイトル
多様化する農協の販売事業方式-3農協の事例より-
要旨

1 青果物の流通チャネルは卸売市場経由が大宗を占めている。この卸売市場取引におい
て,仲卸業者の大口顧客である量販店のニーズ(品質と規格の統一性と数量・価格の安定性)
に応じるために,1960年代,70年代を通じて,農協系統では,共同選果,共同出荷,共同
計算,無条件委託の4点を特徴とする共同販売体制の確立・整備が図られてきた。
  しかし80年代半ば以降は,青果物卸売市場経由率が徐々に低下するなど,それまでの流
通構造に変化が生じている。この要因として,農協販売事業の視点からみると,量販店や
外食産業の市場外仕入れおよび生産者の直接販売の増加等の点が注目される。
  そこで本稿では,流通構造の変化に合わせて,卸売市場出荷以外にも取引対応している
3農協の事例を現地での聞き取り調査の結果を中心に紹介する。
2.A農協は青果物取扱高の約2割を直接販売している。A農協は,直販の精算方法として
「直販預り金制」を導入し,価格変動の緩衝財源を備えることで,商談において柔軟な価
格交渉を可能にしている。またA農協は,パッケージ・センターを設置したり,取引先の
数量変更要請に対応している。さらに代金回収リスク対策として,直販預り金制に加え
て,契約書締結や取引先の情報照会を行っている。A農協は,リスク軽減のシステムを導
入し,さまざまな業務を担うことで,生産者の手取り額を高めることに貢献している。
3.B農協は,共同販売対象外の農産物取引について,生産者と加工企業との間に立ち,加
工企業との交渉,生産者との調整・指導,双方に対する情報伝達等の仲介を行っている。
  生産者と加工企業が直接取引を行うことは,生産者にとっては業者に関する情報不足に
より,独自の販路開拓は難しく,代金回収等の面でリスクが大きい。一方,企業にとって
も生産者に関する情報不足により安定調達に不安が残るものと思われる。このような双方
の情報不足をB農協が補完することで,取引が円滑に行われている。
4.C農協は,精算時の価格を一本に平均化する共同計算から,アイテム別に平均化する共
同計算に変更した。これにより,直売している生産者グループも代金決済を中心に農協を
利用するようになった。さらにC農協は,直売グループに販路拡大のための情報を提供
し,直売に伴うリスク軽減のために移出業者と業務契約書を結んでいる。C農協は,代金
決済代行,情報提供や販売リスク対策等において農協利用のメリットを生み出している。
5.以上の3つの事例は,総じて,卸売市場出荷を中心とする共同販売以外に農協の関与を
要する機会が生じていること,また実際に農協が従来型の共同販売以外の方法でかかわる
ことで生産者にメリットをもたらすことができること,を示しているといえよう。

刊行年月日
2002年02月01日
著者/
研究者紹介
尾高   恵美 (オダカ メグミ) : リサーチ&ソリューション第1部   リサーチ&ソリューション第1部長、主席研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2002年02月号 第55巻 第2号 通巻672号  22 ~ 35ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2002/02/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0202re2.pdf  87.2KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1421.html