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書誌情報

論題:野菜出荷における生産者の農協利用状況

03.09.01[ 更新10.06.18 ]

タイトル
野菜出荷における生産者の農協利用状況
要旨

1 近年,大規模生産者を中心に,農産物を農協に出荷せずに直接販売したり,農業生産資
材を農協以外から購入する動きが目立つなど,農協を利用することのメリット低下や農協
離れが指摘されている。そこで本稿では,野菜の出荷に焦点を当てて生産者の農協利用状
況を考察した。
2 野菜出荷量に占める農協のシェアは90年産から00年産にかけて上昇しており,農協離れ
が生じているとはいえない。とはいえ,アンケート調査結果によると生産者の農協利用率
は一律に高いわけではなく,農家では75.6%,農業法人では21.6%と格差がみられる。
販売先を選択する理由として,「代金回収が確実」は農家と農業法人で共通しているが,
そのほかに農家では「集出荷施設の利用」,農業法人では「価格や数量が安定」や「より
高く販売できる」という理由が多い。農家の農協利用率が農業法人に比べて高い一つの要
因は,農家が販売先に求めるニーズに農協のサービスが適合していることにある。
3 農協出荷に対する評価では,全体的に農家に比べて農業法人の評価は低くなっている。
農家,農業法人ともに,「代金回収の確実性」や「決済期日までの短さ」の評価は比較的
高いものの,「手取り」と「価格の安定性」の評価は相対的に低いという点では共通して
いる。「価格の安定性」に対する評価は,主たる販売先が農協か否かとの相関が比較的強
く,なおかつ「農協の方がよい」とする割合が相対的に低いため,この点を優先的に改善
することが農協が主たる販売先として生産者に選択されるために有効であることが示唆さ
れる。
4 契約取引は,農業法人の65.9%が実施し,実施しなかった回答者でも関心をもっている
回答者が約半数を占めている。また,契約取引にかかる業務については代行の要望が多く,
代行機関として農協に対する期待が大きい。一方,農協の契約取引の実施割合は52.9%と
農業法人に比べて低くなっている。契約取引を実施しなかった農協では,代金回収リスク
の存在や販路開拓の困難さを理由としてあげる割合が比較的高い。
5 A農協では86年から契約取引を行っている。農協は販路開拓や欠品といった契約取引の
問題点の克服に努める一方,安全・安心の消費者ニーズにも対応している。これにより価
格の安定というメリットと,生産者の段ボール代や運賃負担が軽減されるために卸売市場
出荷に比べて手取りが多いというメリットを生産者に提供している。実需者との契約取引
を行うことにより農協の業務負担は増加しているが,そのコストとして独自の手数料率を
設定している。
6 契約取引には,安定供給の確保,実需者が求める等級の偏り,代金回収リスクの存在な
ど問題点が多く,低い販売手数料率を前提とする現行の農協の販売事業体制の下では,契
約取引を実施したり,その割合を高めることには困難が伴う。しかしA農協の事例は,農
協が営業専任部署を設置したり独自の手数料率を設定するなどの体制を整えることによっ
て,契約取引の問題点を克服し,生産者に価格の安定性というメリットを提供できる可能
性があることを示している。

刊行年月日
2003年09月01日
著者/
研究者紹介
尾高   恵美 (オダカ メグミ) : リサーチ&ソリューション第1部   リサーチ&ソリューション第1部長、主席研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2003年09月号 第56巻 第9号 通巻691号  48 ~ 65ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2003/09/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):食品・フードシステム
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0309re4.pdf  124.0KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1570.html