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書誌情報

論題:賃貸住宅ローンの現状と課題

05.04.01[ 更新10.09.03 ]

タイトル
賃貸住宅ローンの現状と課題
要旨

1 80年代後半,賃貸住宅建設は,地価上昇に伴う租税負担を軽減する手段の一つとして注目され,大手金融機関は,賃貸住宅経営の収益性の観点よりも,不動産価格の上昇による担保の安全性を見込んで融資を行うスタンスであった。バブル崩壊以降は,賃貸住宅の供給過多による家賃収入の減少によって賃貸住宅経営が困難となるケースが見受けられ,金融機関は不動産担保重視の融資スタンスから,建設後の入居見込みなど賃貸住宅経営の収益性,ローン利用者のキャッシュ・バランスなどを融資に反映するようになった。
2 今日の賃貸住宅市場は,都心回帰,都市再開発,地域経済の活性化による人口増加が,賃貸住宅建設を促進している一方で,住宅メーカーの積極的な営業戦略や節税対策の手段など実需以外の要因も加わり,賃貸住宅が建設されるケースもある。そのため,現在は,実需以上に供給量が増大しており,賃貸住宅の需給ギャップが大きな問題となっている。
3 サブリースは,節税対策や資産活用を行いたいが,賃貸住宅経営には不慣れで経営に自信が持てない,という資産家のニーズをとらえ,賃貸住宅建設を促進する一つの要因となっている。しかし,サブリースによる賃貸住宅経営の外部委託化は,需給ギャップを拡大させる可能性もある。
4 現在の賃貸住宅ローンは基本的にはノンリコースローンで行われ,事業計画上,家賃収入のみで経営が成り立つことを前提としている。一部の金融機関は,賃貸住宅ローンを富裕層取引の一手段として前向きな姿勢をみせているが,多くの金融機関は供給過剰に陥りやすく,事業性リスクが大きいという業界の特性や駅からの距離,日当たり,床面積,内装,設備などの条件の違いによって収益性が異なるという個別性を考慮して慎重に対応している。
5 将来の賃貸住宅市場は,人口の減少によって賃貸住宅の需要が減少する一方,相続・節税対策や転業による賃貸住宅建設に加えて,分譲マンションの賃貸住戸化,コンバージョン等供給量を増大させる新しい潮流もあり,需給ギャップは拡大していくことが予想される。賃貸住宅ローンについては,地域の賃貸住宅市場の将来動向を多角的に検討するとともに,個々の案件についての収益性とリスクをきちんと吟味する慎重な対応が求められよう。

刊行年月日
2005年04月01日
著者/
研究者紹介
古江   晋也 (フルエ シンヤ) : リサーチ&ソリューション第2部   主任研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2005年04月号 第58巻 第4号 通巻710号  16 ~ 28ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2005/04/
第一分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):国内金融
キーワード
賃貸住宅ローン,アパートローン,サブリース,ノンリコースローン
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0504re2.pdf  169.3KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1720.html