書誌情報
論題:リテール金融市場における総合金融サービス機関化-ビッグバン構想から8年を経て-
05.05.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- リテール金融市場における総合金融サービス機関化-ビッグバン構想から8年を経て-
- 要旨
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1996年11月に当時の橋本首相は,金融分野全般にかかる規制緩和策,いわゆる日本版金融ビッグバン構想を発表した。この構想は,フリー・フェア・グローバルの基本3原則にのっとり,自由で公正な金融市場を構築することを目的としていた。それから約8年の間に,規制緩和や自由化とともに金融システムの安定化のための様々な取組み,金融行政機構の改革,公的金融機関の業務縮小等が行われた。利用者の観点からみると,商品・サービスの多様化,金融商品へのアクセスの拡大,手数料・保険料の自由化,利用者保護の整備が行われた。
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ビッグバン以前と比べると,破綻や合併によって民間金融機関の数は大きく減少した。一方で,インターネットやATMを活用した新しい銀行の設立も行われている。また,銀行等のデリバリーチャネルも大きく変化している。インターネットバンキングやコンビニエンスストアに設置されたATMは徐々に利用者に普及している。店舗数は減少しているが,利用者が足を運びやすい店舗を設置し,幅広い資産運用相談の場として店舗を再構築するなど質の変化が進んでいる。店舗や外務員といった対面チャネルは,投資 信託等の市場性金融商品の販売や利用者のニーズを把握する場としての役割が期待されている。
98年12月に投資信託の銀行窓販が本格的に開始され,04年末の銀行等の販売シェアは33.9%になった。02年10月から販売が開始された個人年金の銀行窓販額は,04年3月までの1年半で3兆円を突破し,個人年金の保有契約高自体の伸長に貢献した。こうした商品の販売による手数料収入は収益源として徐々に大きくなってきている。
アンケート調査や統計からみると,インターネットやコンビニATMの利用は徐々に浸透し,銀行等での投信や個人年金の購入も増え,金融商品の販売経路はビッグバンによって変化してきているといえる。しかし,家計の金融資産構成そのものは,まだ預貯金が半分以上を占め,運用手段が大きく変化したとは言い難い。ただし預貯金のペイオフの全面的な凍結解除や,ビッグバン以前に比べて投資信託等への商品のアクセスが格段に向上していることから,もし,所得環境の好転や,株価の上昇等,家計を後押しする要因が生じると,市場性金融商品への資金シフトは以前よりも容易に発生しうると考えられる。 - 刊行年月日
- 2005年05月01日
- 著者/
研究者紹介 -
重頭 ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部 副主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2005年05月号 第58巻 第5号 通巻711号 2 ~ 19ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- キーワード
- 新規参入銀行,コンビニATM,利用者保護,デリバリーチャネル
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1726.html