書誌情報
論題:店舗規制緩和と金融機関の店舗展開
05.08.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- 店舗規制緩和と金融機関の店舗展開
- 要旨
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1 80年代まで,金融機関の店舗は監督当局によって設置場所,営業時間などが厳しく規制されていた。しかし,80年代後半から,店舗規制は緩和されるようになり,90年代後半には店舗通達の廃止,インターネットバンキングやコンビニATMをはじめとするチャネルの多様化等によって金融機関は自らの経営戦略に合わせた店舗戦略が求められるようになった。
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2 金融機関店舗の規制緩和は大別して次の三つの時期に区分することができる。その第一期は,80年代から97年の店舗通達廃止までの時期である。80年代の金融機関店舗はフルバンキング型が一般的であり,各金融機関は店舗数を増加させ,より稠密なネットワークを構築することをめざしていた。しかし,90年代半ばから自己資本強化を求めるBIS規制や不良債権処理問題によって都銀等の支店数は93年をピークに減少していった。
3 第二期は,金融ビッグバンから00年までの既存の店舗統廃合とチャネルの多様化の時期である。店舗規制の緩和によってインストアブランチなどの開設が可能となり,金融機関は従来よりも顧客にアクセスしやすくなった。しかし一方で,不良債権問題が90年代中頃よりも深刻化し,金融機関は安定した収益を確保するため,個人リテール業務に本格的に取り組み始めた。
4 第三期は,01年以降から今日まで続くワンストップ化への流れである。第一期,第二期が店舗規制の緩和であったのに対して,第三期は金融商品の販売チャネルの拡大や金融業の新規参入という形での規制緩和となり,質的に変化した。00年前後からは,「わが国金融システムの改革――2001年東京市場の再生に向けて」と題する金融システム改革構想をベースに銀行,証券,保険の垣根を取り払う法改正が次々と行われた。今日,金融機関の店舗数は減少しているものの,店舗は,伝統的な預金業務等だけでなく資産運用相談等を通じた顧客との相対取引を行う場として再び注目されている。
5 現在,多くの金融機関はリテール強化に向けて多様な店舗戦略を展開しているが,試行錯誤を続けていることも事実である。今後,金融商品の販売チャネルの多様化等が進展していくなかで,各金融機関は自らの顧客層の特性分析と同時に,今後どのような顧客層を開拓し維持していくのかという一層きめ細かな戦略が求められ,それに基づいた店舗形態の選択やネットワークを再構築する必要があるといえる。 - 刊行年月日
- 2005年08月01日
- 著者/
研究者紹介 -
古江 晋也 (フルエ シンヤ) :調査第二部 研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2005年08月号 第58巻 第8号 通巻714号 2 ~ 11ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- キーワード
- 店舗規制,金融機関店舗,チャネル,店舗戦略
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1752.html