書誌情報
論題:魚類養殖の現状からトレーサビリティを考える
05.12.01[ 更新10.06.18 ]
- タイトル
- 魚類養殖の現状からトレーサビリティを考える
- 要旨
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わが国の漁業生産において存在感を増しつつある海面養殖業は、1960年代後半以降魚類等の給餌型養殖を中心に伸長したが、その半面で密殖や多投餌等を通じて漁場環境の急速な悪化をもたらした。このため、持続的養殖生産確保法に基づく漁場改善が進められており、その一環として放養量の適正化や環境負荷の小さい配合飼料への転換も進められている。
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水産業界においては、こうした養殖部門を中心にトレーサビリティへの取組みが展開されているが、この背景には養殖水産物に対する消費者の不安の高まりがあるものと考えられる。輸入養殖エビやウナギからの抗菌剤や抗生物質の検出、あるいは輸入カキの偽装表
示等の事件が相次いだことのほか、養殖魚の生産工程に起因するリスクの存在も背景にあるものとみられる。
わが国の場合、トレーサビリティに関しては、消費者への情報提供方法も含め「生産者や食品事業者による自主的な取組」と「食品の特性に応じた取組」が基本となっている。このため水産物に関しては、商品の差別化やブランド化を目的に、消費者へ直接履歴情報を
提供する商品別システムが一部実用化されつつあるものの、多くの場合養殖魚の生産履歴情報が卸売市場の段階で中断されるなど、普及はこれからという状況にある。
消費者のニーズはトレーサビリティそのものよりも食品の安全・安心にあり、さらにはEUのTraceFish導入をめぐる動きも具体化しつつある。トレーサビリティの普及促進のためにも、こうした情勢や水産物流通の特殊性を踏まえたトレーサビリティシステムとして、基本部分を統一したシステムの構築が必要ではないだろうか。 - 刊行年月日
- 2005年12月01日
- 著者/
研究者紹介 -
出村 雅晴 (デムラ マサハル) : リサーチ&ソリューション第2部 専任研究員 - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2005年12月号 第58巻 第12号 通巻718号 52 ~ 63ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):水産業
- 第二分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):環境
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1784.html