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書誌情報

論題:地方銀行とCSR-環境保全への取組みを中心に-

06.09.01[ 更新10.09.03 ]

タイトル
地方銀行とCSR-環境保全への取組みを中心に-
要旨

1 地域金融機関は,設立当初から地元経済と深くかかわり,地域貢献活動などに取り組んできた。しかし,最近の地域金融機関は,①営業地域との更なる密接な関係の構築,②他の金融機関との差異化,③環境報告書,CSRレポートなどの非財務的情報の開示,等が重要な経営課題となり,その解決策として従来よりも戦略性を持った環境配慮型経営やCSR経営を展開し始めた。
2 金融機関における環境保全への取組みは大別して,①自らが省エネ,環境負荷の少ない商品等を優先的に購入するグリーン購入等を通じて環境保全を実施する環境負荷低減と,②融資やSRI(社会的責任投資)ファンドの販売など,事業活動を通じた環境ビジネスに分けることができる。環境負荷低減活動については,コスト低減の観点から継続的に実施されているが,環境配慮型融資残高やSRIファンドの販売額については,各地銀における営業地域の環境意識や営業努力よって異なっていた。しかし,原油価格の高騰や環境保全への規制強化によって環境事業は収益を生み出す分野であるという認識は高まりつつある。
3 90年代後半以降,環境報告書ないしはCSRレポートをはじめとした情報公開が,広がりつつあるが,その一方で,多くの地銀は外部報告目的として環境会計を活用することに慎重な姿勢を見せていた。その要因は,①金融業は他産業と比較して相対的に環境負荷が少なく,環境負荷を金額換算しても数値的に少額となり,金額換算する意義は小さい,②そもそも環境会計の問題点として恣意性や不確実性がある,ためである。
4 従来,CSRは企業の利益還元としてとらえられ,企業業績に大きく依存するという一面があった。しかし,近年のCSRは,従来のような「利益還元型CSR」ではなく,「本業の一部に組み込まれた」CSRを展開することで,地域環境の改善と企業価値の向上という二律背反と考えられてきた経営課題を解決しようとしている。CSRを実施する意義は,企業価値の向上にある。ただし,企業価値は適切に管理される必要があり,高度なブランド戦略,人材育成をはじめとしたサポート体制の構築の整備が不可欠となってくる。今後,CSR経営を実践している金融機関が,企業価値を向上させるためにどのような戦略を展開していくのか,が注目される。

刊行年月日
2006年09月01日
著者/
研究者紹介
古江   晋也 (フルエ シンヤ) : リサーチ&ソリューション第2部   主任研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2006年09月号 第59巻 第9号 通巻727号  14 ~ 22ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2006/09/
第一分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):国内金融
キーワード
地域金融機関,地方銀行,CSR,環境保全
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0609re2.pdf  76.0KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1853.html