書誌情報
論題:デフレ脱却後のわが国金融政策のあり方
06.09.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- デフレ脱却後のわが国金融政策のあり方
- 要旨
-
1 日本銀行の量的緩和政策解除以降の政策運営は,日銀独自の経済・物価判断と見通しを基に,現実の動きがそれに沿った動きをしているかどうかを検証しながら,インフレなき持続的成長を目指すというフォワード・ルッキング的な手法も取り入れて進められている。その一方,量的緩和政策で採用されていたコミットメント重視型の政策運営は後退し,かつてのような裁量性の強い政策運営が復活していると判断される。
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2 世界的にコミットメント(公約)やルールに基づいた政策は,財政政策や金融行政においても主流になりつつある。金融政策においてもコミットメントやルールを明確にした上で政策運営を行い,その結果について責任を負うという考え方を導入する国が増える傾向にある。
3 こうしたコミットメント重視型の政策運営の手法の一つがインフレ目標政策であり,1990年にニュージーランドで導入されて以来,先進国,発展途上国,市場経済移行国といった経済発展段階を問わず,幅広い国で金融政策運営のフレームワークとして機能している。
4 インフレ目標政策は,金融政策を巡る「時間非整合性(事前には最適だと思われた政策が事中・事後には必ずしも最適ではなくなること)」の問題に伴って発生するインフレ・バイアスを解消するために考え出された政策フレームワークである。インフレ目標政策が成功するには,①中央銀行が物価に対して制御可能性を持っていること,②掲げられたインフレ目標に対して,中央銀行がその実現に向けた努力を示し,③その努力が成果をもたらすこと,が必要である。また,運営に当たっては柔軟性・弾力性を確保しておくことも重要であろう。
5 金融政策の正常化を進める日銀の金融政策には「わかりにくさ」があり,また市場と対話する機会も多くない。今後の金融政策運営の枠組みの候補の一つとして,インフレ目標政策の導入を十分検討する余地はある。 - 刊行年月日
- 2006年09月01日
- 著者/
研究者紹介 -
南 武志 (ミナミ タケシ) :調査第二部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2006年09月号 第59巻 第9号 通巻727号 23 ~ 34ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- キーワード
- 日銀,金融政策,インフレ目標政策,市場との対話
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1856.html