書誌情報
論題:地産地消型流通による学校給食への農産物供給-野菜を中心に-
06.10.01[ 更新10.06.18 ]
- タイトル
- 地産地消型流通による学校給食への農産物供給-野菜を中心に-
- 要旨
-
1 本稿では,野菜を中心に学校給食における地場産農産物の使用の現状とそれを制約して
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いる問題点と課題を整理し,先進的な事例により対応策を示すことを試みた。
2 現状では,学校給食での使用食材に占める地場産の割合は約2割にとどまっている。し
かし調理場における地場産農産物使用の意向は強く,今後,拡大の余地はある。地場産農
産物使用拡大にはさまざまな問題点があるが,本稿では①地場産農産物調達のための生
産・流通システムの構築,②規格のばらつき,学校給食の規格外品や腐敗品の混入といっ
た規格に関する問題,の2点に焦点を当てた。
3 本格的に地場産農産物の使用を開始する際に,農協共販や卸売市場以外から調達する場
合には,調理場からのニーズに対応できる生産体制や,モノ・代金・情報に関する流通機
能を備えた生産・流通システムを新たに構築する必要がある。しかし,調理場と生産者と
の調整役が不在であることと,人員不足等により調理場が流通機能を担うことが難しいた
めに,新たに構築することが困難になっていると思われる。
4 一方,規格に関する問題は野菜産出額の少ない地域で多く指摘されている。野菜産出額
の少ない地域では,野菜を自家消費用栽培ないしその延長として産地直売所で販売してい
る生産者が,学校給食に出荷を始めた事例が目立つ。この場合,栽培技術が定着しておら
ず,共通の規格基準がなく,それを遵守するための仕組みがないことが規格に関する問題
が生じる要因と考えられる。規格に関する問題の発生状況は,地域の農業情勢に基づく地
域の生産・流通システムによって異なっている。
5 学校給食での地場産農産物の使用においては,子どもたちと生産者との距離を近づける
という観点も大切になろう。ところが子どもたちと生産者との交流活動を実施している割
合が高い地域においては,規格に関する問題を指摘する割合が高い傾向がみられる。子ど
もたちと生産者との距離を近づけることと,規格の問題による調理員の負担がないことの
二つは概して両立が難しい状況にあるといえる。
6 しかし,野菜産出額の少ない地域においても,調理場が子どもたちに生産者情報を提供
しつつ,流通コーディネータの機能をもつ産地直売所の活用によって生産者や調理場の負
担を軽減している事例がある。また子どもたちと生産者が交流活動を行いつつ,規格とそ
れを遵守するための仕組みの整備によって規格に関する問題を改善している事例もある。
これらの事例では,子どもたちと生産者の距離を近づけることと,取引による調理場の負
担軽減とを両立させているといえる。
7 子どもたちと生産者との距離の近さと取引による関係者の負担軽減を両立するには,①
生産・流通システムの構築のための調整役として生産者と調理場の両者との信頼関係があ
ること,②流通コーディネータを活用したり,地域の関係者で流通機能を役割分担するこ
と,③調理場と生産者の意思疎通に基づく協力,が重要となろう。 - 刊行年月日
- 2006年10月01日
- 著者/
研究者紹介 -
尾高 恵美 (オダカ メグミ) : リサーチ&ソリューション第1部 リサーチ&ソリューション第1部長、主席研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2006年10月号 第59巻 第10号 通巻728号 2 ~ 17ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):食品・フードシステム
- 第二分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):農協
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1862.html