農林中金総合研究所

フランスには，大きく分けて，①クレディ・アグリコル，②ケス・デパルニュ，③クレディ・ミュチュエル，④バンク・ポピュレール，⑤クレディ・コーペラティフという５つの協同組合銀行が存在するが，これらはいずれも社会貢献活動の一部として連帯ファイナンス機関との提携を行っている。
　連帯ファイナンス機関の１つであるADIEは，創業を希望しているにもかかわらず一般の銀行から借入を行うことができない人に対して，資金供給することを目的に1989年に設立されたアソシエーションである。特に，長期的な失業者を主なターゲットとして，事業設立のための融資だけでなく経営の支援も行っている。
　ADIEは設立以来融資のための資金が不足する状態であったが，94年にクレディ・ミュチュエルとの提携を開始したのを皮切りに民間銀行との提携が始まった。この枠組みにおいては，ADIEが借入のための書類を準備し，貸付委員会で審査をしたのち提携銀行が市場金利で融資を行う。通常のローンと同様の管理は銀行が行うが，新規に設立した企業への経営アドバイス等はADIEが行う。
　民間の銀行の支援もあってADIEの融資件数は年々増加している。特に協同組合銀行においては，地方レベルの組織がADIEと提携し具体的な支援にかかわっており，地域を基盤として様々な組織が連携して雇用創出に取り組んでいる。こうした取組みは協同組合銀行が金融機関として，また地域経済の主要な担い手として，社会的な責任を果たす上で非常に重要な意味をもっていると考えられる。