書誌情報
論題:イタリアの信用協同組合銀行(BCC)-組合員制度の変更と現在の状況-
07.05.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- イタリアの信用協同組合銀行(BCC)-組合員制度の変更と現在の状況-
- 要旨
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19世紀末のイタリアの農村部では高利貸しがはびこっていたが,小規模な農業者たちが自助の精神を喚起することによって自身の地位を向上させようとする取組みとして,1883年に初の農村金庫が設立された。
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1937年に特別法として農村・手工業統一法典が制定された。これにより信用を供与する対象が職人にも拡大され,名称も農村・手工業金庫に変更された。同法のもとでは,組合員数の80%は農民あるいは職人,または両方を兼ねる者で,金庫の所在する自治体に居住,あるいは自己の主要な経済活動を遂行する者でなければならなかった。また,非組合員への融資は25%を超えてはならないと定められていた。
1989年にEC閣僚理事会で採択された第二次銀行指令に沿って,銀行に課せられていた業務や出店の制限を撤廃するため,93年に銀行法が改正された。改正銀行法では,業務エリアに居住したり働いたり継続的な活動を行ったりしている人であれば,職業に関係なく組合員になることが可能になり,農村・手工業金庫は信用協同組合銀行(BCC)となった。BCCは,「主に」組合員に対して信用供与を行うと定められているが,これは,融資の50%超を組合員向けに行うことをさす。現在439のBCCは,すべてこの基準を満たしている。
ヒアリングによれば,組合員制度の変更に対して従来の組合員から特に不満はなく,地域住民からも歓迎されたという。それには,地域に密着した銀行という性格をつとめて維持したことが功を奏しているようである。むしろ,BCCサイドでは,商業銀行が農村に進出してきて顧客を奪われることを懸念していたが,結果的にBCCは国内銀行最多の店舗ネットワークを生かして組合員数を大幅に増やしている。BCCでは,99年に策定した価値憲章においても,地域発展への貢献,協同組合原則と自らの社会的責任を明示しており,地域のための金融機関という姿勢をはっきりと打ち出している。 - 刊行年月日
- 2007年05月01日
- 著者/
研究者紹介 -
重頭 ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2007年05月号 第60巻 第5号 通巻735号 15 ~ 26ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):海外協同組織金融機関
- キーワード
- フェデルカッセ,イックレア
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1921.html