書誌情報
論題:多重債務問題への対応と地域金融機関
07.08.01[ 更新10.09.03 ]
- タイトル
- 多重債務問題への対応と地域金融機関
- 要旨
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1 政府は06年12月に内閣に多重債務者対策本部を設置することを閣議決定し,07年4月に同本部は「多重債務問題改善プログラム」を公表した。消費者金融の利用者が少なくとも1,400万人,多重債務者が200万人超ともいわれ,社会的関心が高まるなか,金融機関が多重債務問題にどのように取り組むか,が改めて課題となっている。
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2 多重債務問題が80年代前半に社会問題化して以降,出資法の上限金利が段階的に引き下げられた。しかし,消費者金融会社等はその後も利息制限法を上回る,いわゆるグレーゾーン金利での貸付を継続したため,社会的課題が残った。このことを受けて2000年ごろから借換ローンを販売する金融機関が増加している。しかし,借換ローンは,①利息制限法の上限金利を超えた利息の返還請求を行わずに借り換えを行えば,グレーゾーン金利が元本に加わることや,②生活設計の是正が行われないために再び多重債務に陥る,といった課題もある。また,一度生活再建に成功した人が再度,多重債務に陥る割合は,30~40%ともいわれている。そのため,多重債務問題を根本的に解決するためには,カウンセリングを主体とした対応が不可欠である。
3 今回ヒアリングを行った金融機関は,配偶者や家族等を含めた協力体制の構築や継続的な相談者へのサポートなどを行うことで多重債務者向け負債整理融資の貸倒れを防ぐと同時に,多重債務者を生活再建に導いている。このような取組みの結果,金融商品販売だけでは生み出すことができない顧客との強固な絆が形成されることになり,債務返済後にはロイヤリティの高い優良顧客となったケースもある。
4 一連の法令改正によりグレーゾーン金利は撤廃されるが,多重債務問題が解消するわけではない。高い公共性・公益性を期待される金融機関においては,多重債務問題への取組みはCSRの観点から継続的かつ真摯に取り組むべき重要な課題であり,企業(組織)の基盤・理念に沿った事業展開として位置付けて実施していくことが求められていると思われる。 - 刊行年月日
- 2007年08月01日
- 著者/
研究者紹介 -
古江 晋也 (フルエ シンヤ) :調査第二部 研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2007年08月号 第60巻 第8号 通巻738号 13 ~ 23ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- キーワード
- 多重債務問題,CSR,生活再建,ロイヤリティ ,グレーゾーン金利
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1944.html