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書誌情報

論題:1970年代以降近年までの農協資金の軌跡

07.10.01[ 更新10.09.03 ]

タイトル
1970年代以降近年までの農協資金の軌跡
要旨

1 農協金融は農業・農村の金融として,その時代の経済・金融の動向,農業や農家・農村の変化の影響を受けて,著しい成長・発展を遂げてきた。本稿は農協の貯金・貸出金の動向を70年代,80年代,90年代以降の3つの時期に分けて分析し,それに影響を及ぼした様々な要因の分析・整理を試みる。
2 70年代は高度成長から安定成長に変わり,農家は農業所得が伸び悩むなか,兼業化の進展により農外所得が拡大した。農協貯金は72,73年に土地代金流入により急増,その後も農外収入増で年間増加額は2兆円を超える水準が続いた。貸出金は金融が逼迫した73年に年間増加額1.9兆円の最高額を記録,その後は厳しい引締めで増加額の縮小が続いた。貸出用途別では農業資金の割合が低下し,農外事業資金,住宅・アパート資金が伸長した。
3 80年代は円高不況からバブル景気へと移り,金融面では金利の自由化により大口定期,小口MMC等が導入された。農家は農業所得が冷害等で低迷,農外所得も円高不況で伸び悩んだ。農協貯金は前半伸び悩んだが,88~91年は土地代金の急増により年間増加額は3~5兆円に膨らんだ。貸出金は前半低迷したが88年以降回復し,南関東を中心に住宅・アパート資金が伸長した。
4 90年代以降は,バブル経済が崩後し不況が長期化した。金融面では金融ビッグバン,金融機関の破綻処理,ゼロ金利政策,量的緩和政策,ペイオフ凍結解除等が実施された。農家は農業所得,農外所得とも低迷した。農協貯金は92年以降増加額が縮小し,95年は住専問題の影響を受け,初めて残高減少となったが以後回復した。貸出金は99年以降増加額が縮小し2000年より残高減少となった。貸出用途別ではアパート(賃貸住宅)資金が全国に広まったが,近年は自己住宅資金が中心となっている。
5 これまで農家の兼業化による農外収入の増加が,農家の家計の安定化をもたらし農協貯金の中心財源となった。また,農村の都市化による土地代金の流入が貯金の増加を加速してきた。近年の貯金の伸び悩みは,こうした財源の低下と低金利により資金の一部が市場性金融商品に流れていることが原因と思われる。さらに今後,構造的要因として農家の相続・離農による貯金減少の影響が懸念され,その対策,取組みが重要である。

刊行年月日
2007年10月01日
著者/
研究者紹介
本田   敏裕 (ホンダ トシヒロ) : リサーチ&ソリューション第2部   専任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2007年10月号 第60巻 第10号 通巻740号  25 ~ 36ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2007/10/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協信用事業
キーワード
農家経済,個人金融,農協貯金,農協貸出金,農協資金,軌跡
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0710re3.pdf  118.3KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1959.html