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書誌情報

論題:農協生産部会に関する環境変化と再編方向-青果物の生産部会を中心に-

08.05.01[ 更新10.06.18 ]

タイトル
農協生産部会に関する環境変化と再編方向-青果物の生産部会を中心に-
要旨

1 農協における青果物の生産部会に関する環境は,近年大きく変化している。生産部会が
生産者の農業経営の安定を確保するためには,変化に適応して部会を再編することが急務
である。
2 青果物の生産部会に関する外部環境の変化としては,消費者の健康・安全志向の広がり
を背景に,生協や量販店における,インショップや産直,安全・安心に配慮した商品等へ
の取組みが目立つ。一方では,簡便化志向を背景に食の外部化が進み,野菜用途における
加工・業務用需要が伸びている。さらに一部の卸売業者や小売業者では合併や経営統合に
より規模を拡大する動きがみられる。一方,内部環境の変化としては,高齢化と農協の広
域合併による生産者の異質化があげられる。
3 農協信用事業動向調査によると,このような環境変化に適応して,生産部会の再編は大
きく2つの方向で進められている。1つめは,農協合併に伴って,旧農協の生産部会を統
合して出荷ロットを拡大する方向であり,これは大規模や中規模の産地で比較的多く実施
されている。2つめは販売チャネルや生産者の特性に応じて再編する方向であり,中規模
産地で多くみられる。
4 販売チャネルに応じたものとして,24.1%の農協が「生協や量販店への出荷に対応した
生産部会」を設立し,19.4%の農協が「加工・業務用への出荷を目的とした生産部会」を
設立している。また,生産者の特性に応じたものとして,17.3%の農協が「生産者の技術
水準を特定した生産部会」を設立している。しかし,「生産者の年齢層を特定した生産部
会」を設立している農協は2.8%にとどまっている。
5 再編しつつ発展してきた生産部会の事例を具体的にみると,産地の規模を拡大してきた
JAなすの・ねぎ部会は,農協合併後の生産部会の統合や,部会員の増員と1戸当たり作
付面積の増反を行いつつ,品質の高位平準化に努めてきた。この結果,卸売市場での評価
が高まり,部会員の農業収入の安定をもたらした。
一方,JA常総ひかり石下地区契約レタス部会では,少人数の部会員が緊密に協力する
ことによって,加工・業務用に契約取引で安定的に出荷している。取引先の拡大とともに
作付面積が伸びており,数量や価格が比較的安定した取引の増加は,部会員の農業経営の
安定に寄与している。
6 JAグループとしては,環境変化を的確にとらえつつ,生産者の経営方針に基づき販売
戦略を明確にした上で,生産部会の再編を進めることが重要になろう。とくに販売チャネ
ルに応じた生産部会を設立する場合,生産部会の事務局機能だけでなく,販路開拓や取引
先との交渉といった営業機能も必要になる。生産部会の再編を進めるには,経済連・全農
県本部と協力しつつ,農協内部の農産物販売にかかるシステムを一層強化することが求め
られているといえよう。

刊行年月日
2008年05月01日
著者/
研究者紹介
尾高   恵美 (オダカ メグミ) :調査第一部   主事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2008年05月号 第61巻 第5号 通巻747号  30 ~ 42ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2008/05/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):国内農業
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0805re3.pdf  104.1KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2011.html