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書誌情報

論題:欧州の協同組合銀行における国際会計基準第32号への対応状況-組合員の出資金に関する会計上の取扱いをめぐる動き-

08.06.01[ 更新10.06.18 ]

タイトル
欧州の協同組合銀行における国際会計基準第32号への対応状況-組合員の出資金に関する会計上の取扱いをめぐる動き-
要旨

国際会計基準審議会(IASB)は,2002年6月に国際会計基準第32号(IAS第32号)の修正公開草案を公表した。草案で示された資本と負債の定義によれば,金融商品は現金その他の金融資産を引き渡す契約上の義務である場合には負債であり,組合員が償還を請求する権利を有している協同組合の出資金も,この負債の定義にあてはまるとされた。EUにおいては,02年7月に採択されたIAS規則によって,05年1月1日以降に始まる事業年度から上場企業の連結決算に国際会計基準の適用を義務付けるとされていたため,欧州の協同組合は組合員の出資金が負債に分類されるという問題への対応を迫られることとなった。
 欧州の協同組合陣営が欧州協同組合銀行協会(EACB)を中心にロビー活動を行った結果,IAS第32号の原則は変更されなかったが,協同組合に対する組合員の出資金を資本と負債のいずれに区分するかに関する解釈指針(IFRIC解釈指針第2号)が04年11月に公表された。この指針によれば,組合員の出資金は,事業体が組合員の出資金の償還を無条件に拒否できる権利を有している場合には資本に分類される。
 05年からの国際財務報告基準の適用対象は,証券を上場している企業の連結決算であるが,ほとんどの協同組合銀行グループにおいては,中央機関が長期の資金調達のために証券の上場を行っており,その場合中央機関自体の連結決算は適用対象となる。単協が適用対象となると想定される主なケースは,①自ら証券を上場し連結決算を行っている場合,②証券を上場している中央機関等を含みグループで連結決算を行っている場合,③国内で上場企業以外の企業にIAS/IFRSを適用している場合,である。②のケースに該当する,フランスやフィンランドの協同組合銀行グループの単協では,出資金を全額資本に分類するため,定款を修正して組合側が組合員の出資金の償還を無条件に拒否できる権利を持つという規定を盛り込んだ。
 現在,IASBとアメリカの会計基準を調和させるための取組みが進められているが,そのなかで資本と負債の分類方法についても検討されている。現時点で最も支持されているアプローチ方法によると,多くの協同組合の出資金が負債に分類されることとなるため,各国の協同組合陣営は,協同組合の実態に適した代替的なアプローチを提唱する等,協力してこの問題に対応していく必要がある。

刊行年月日
2008年06月01日
著者/
研究者紹介
重頭   ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部   主任研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2008年06月号 第61巻 第6号 通巻748号  2 ~ 14ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2008/06/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):海外協同組織金融機関
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0806re1.pdf  131.6KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2022.html