書誌情報
論題:経済社会構造の変化と最近の賃金動向
08.08.01[ 更新10.09.06 ]
- タイトル
- 経済社会構造の変化と最近の賃金動向
- 要旨
-
1 1990年前後のバブル崩壊後に日本経済は経済停滞に陥ったが,その過程で企業部門は「雇用・資本設備・負債」のいわゆる3つの過剰を抱え,企業業績は大きく圧迫された。そのため,それらの解消に迫られた企業は大胆なリストラに着手し,バランスシートの改善努力がなされた。その後,中国など新興国経済がめざましい発展を続けたことに下支えられたこともあり,02年以降日本経済は景気拡大局面をたどったが,就業者1人当たりの賃金はなかなか上昇せず,景気の成熟化が進んでいない。
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2 90年代後半にかけて企業の雇用コストが高止まりをみせ,逆に,その後の景気拡大局面において賃金が上昇しなかったという現象は,団塊世代に代表される就労者の年齢構成の変化による影響を大きく受けたものと考える。その他,企業経営者の意識が,かつての「売上・シェア重視」から「利益率・効率性重視」にシフトし,株主価値の向上を目指すような施策を採るようになっていることも,雇用コストの抑制などにつながった可能性も指摘できる。
3 日本では既に人口減少が始まっており,団塊世代の多くが労働市場からリタイアした後,労働需給がかなり逼迫する可能性があり,それが賃金上昇をもたらしていくと予想される。実際に,パートタイム労働者の時間当たり賃金は上昇が続いているほか,新卒予定者の求人倍率は上昇し,若年齢層を中心に賃上げ圧力が強まりつつある。
4 近年,様々な格差が拡大傾向にあることに対する意識が強まっているが,労働市場においては正規従業員と非正規従業員との待遇格差の問題が指摘されることが多い。ワーク・ライフ・バランスの取れた社会を目指すためには,正規従業員の既得権益にも変更を迫る可能性もないわけではなく,その実現にはかなりの困難が予想されるが,中期的にみればそのような社会を実現することが日本経済全体の生産性向上につながるのであれば,その成果は就業者にも配分されていくことになるはずである。 - 刊行年月日
- 2008年08月01日
- 著者/
研究者紹介 -
南 武志 (ミナミ タケシ) : リサーチ&ソリューション第1部 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 理事研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2008年08月号 第61巻 第8号 通巻750号 15 ~ 26ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内経済
- キーワード
- 人口減少,経済成長,雇用コスト,賃金
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2033.html