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書誌情報

論題:欧州協同組合銀行のCSRへの取組み-本業においてステークホルダーが主体となって-

09.04.01[ 更新10.09.06 ]

タイトル
欧州協同組合銀行のCSRへの取組み-本業においてステークホルダーが主体となって-
要旨

欧州では,CSR(企業の社会的責任)とは,社会面および環境面の考慮を自主的に業務に統合することとされている(欧州CSRマルチステークホルダー・フォーラム報告書)。CSRは企業の中核的な事業活動に関するものであり,企業は利益をあげるために存在しているが,環境面,社会面での考慮を統合し,ステークホルダーとの対話に基づくアプローチをとることは,事業の長期的な持続可能性に貢献するとされている。
 特に欧州では失業問題が深刻であり,持続的な発展のためには,政府の努力だけでは解決できない失業に起因する社会的疎外の問題に企業も協力して対応することが求められている。協同組合銀行は,自らが安定的な雇用を提供する事業体であるとともに,中小企業,農業など地域の主要な経済主体への融資に主導的な役割を果たすことによって地域の持続的な経済発展に貢献している。OECDは,近年,協同組合銀行のこうした役割を積極的に評価している。
 イギリスのコーペラティブバンクの倫理政策,フランスのクレディ・ミュチュエルの雇用創出への取組み,オランダのラボバンク・グループのイシューマネジメントといった個別の事例もふまえると,欧州の協同組合銀行のCSRへの取組みは3つの特徴があると考えられる。①存立する地域社会で生じている雇用や環境等に関する諸問題を本業において解決することに焦点をあてている,②組合員や顧客を中心とする幅広いステークホルダーとの対話に基づいて行われている,③CSRの取組みについて,レポート等により幅広く情報公開を行っていることである。
 欧州の協同組合銀行では,「CSRは,協同組合のアイデンティティのなかに,社会的な結びつき,開放性,対話を含む概念としてもともと根付いている」という考え方が一般的にみられるが,近年ではむしろ協同組合のアイデンティティを振興するためにCSRを活用しているという見方もある。協同組合銀行では協同組合の特性が反映されるようなCSRの指標を用いるべきだとの意見もでてきており,I CAの7つの基本原則に基づくCSR指標も提案されている。
 欧州の状況をふまえると,日本においても,協同組織金融機関が地域経済において果たしている役割を広くアピールするとともに,組合員や顧客が主体となって地域の問題を解決する場として単協が機能を発揮していくことが重要であると考えられる。

刊行年月日
2009年04月01日
著者/
研究者紹介
重頭   ユカリ (シゲトウ ユカリ) : リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2009年04月号 第62巻 第4号 通巻758号  16 ~ 29ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2009/04/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):海外協同組織金融機関
キーワード
倫理政策,ラボバンク,クレディ・ミュチュエル,EACB
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0904re2.pdf  95.6KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2096.html