書誌情報
論題:米国クレジットユニオンと預金保険制度
09.09.01[ 更新10.09.06 ]
- タイトル
- 米国クレジットユニオンと預金保険制度
- 要旨
-
1 「市場中心の金融システム」との印象が強い米国にもクレジットユニオンという協同組織金融機関がある。個人金融を中心に大きな役割を果たしており,①非営利で公共目的があること,②「コモンボンド(共通の絆)」と呼ばれる組合員資格範囲の要件を満たさなければならないこと,などユニークなビジネスモデルを構築している。また,クレジットユニオンは組合員に金融サービスを提供する一般のクレジットユニオン(「自然人クレジットユニオン」)に加えて,同機関の余剰資金の運用などを行うための「コーポレート・クレジットユニオン」やコーポレート・クレジットユニオンの余剰資金の運用などを行う「USセントラル・フェデラル・クレジットユニオン」といった中央組織が存在する。
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2 クレジットユニオンの監督制度は米商業銀行などと同じように連邦免許と州免許の二元的免許および監督制度が採用され,連邦レベルでは全米クレジットユニオン管理庁(以下「NCUA」)が免許および監督を行っている。また,クレジットユニオンの預金保険はNCUA内にある全米クレジットユニオン預金保険基金(以下「NCUSIF」)が業務を担っている。クレジットユニオンの預金保険は協同組合的な性格を反映し,「1%預金システム」と呼ばれる預金保険システムを導入している。
3 米国住宅ローンの延滞増加と住宅価格の下落に端を発した金融危機は,クレジットユニオン業界にも大きな影響を与えている。09年3月には,USセントラル・フェデラル・クレジットユニオンとコーポレート・クレジットユニオンうちの1組合がNCUAの管理下に置かれた。その背景には,総資産に占める住宅ローン担保証券と資産担保証券への投資割合が高かったことがある。そのため今後はコーポレート・クレジットユニオンに対する投資基準などが検討されるであろう。また,破綻の危機にあるクレジットユニオンの増加により,NCUSIFの財政状態は一段と厳しくなり,追加的な保険料の負担が求められる可能性がある。
4 米国では,金融規制構造の改革も議論されている。08年3月,財務省は「近代化された金融規制構造のための青写真」を公表し,クレジットユニオン業界を含めた規制当局の再編を提案している。今後の米国金融規制構造改革がどのように展開し,クレジットユニオンにどのような影響を及ぼすのかについても注目が集まる。
- 刊行年月日
- 2009年09月01日
- 著者/
研究者紹介 -
古江 晋也 (フルエ シンヤ) :調査第二部 研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2009年09月号 第62巻 第9号 通巻763号 14 ~ 25ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):海外金融
- キーワード
- クレジットユニオン,信用組合,預金保険,NCUA
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2128.html