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書誌情報

論題:市場細分化戦略における農協生産部会と農協系統の機能高度化-中小規模の野菜生産部会の取組みを中心に-

09.12.01[ 更新10.06.18 ]

タイトル
市場細分化戦略における農協生産部会と農協系統の機能高度化-中小規模の野菜生産部会の取組みを中心に-
要旨

1 本稿の目的は,従来型の大量出荷の販売戦略とそのための生産・流通システムとの比較
により,中小規模の野菜生産部会における市場細分化戦略とそのための生産・流通システ
ムを明らかにすることである。
2 1960年代以降,大量生産,大量流通,大量消費に適した生産・流通システム(以下「従来
型の生産・流通システム」という)が形成された。その背景には,野菜の需要拡大に対応す
るために,①大規模産地育成のための政策的支援と大規模化による生産・流通面の効果,
②流通段階での中央卸売市場の整備,③小売段階でのスーパーの出現があった。
3 従来型の生産・流通システムでは,生産部会は出荷物の斉一化,農協系統は営農指導,
物流,卸売市場への分荷,出荷と代金決済にかかる事務処理等を担い,一方の卸売市場関
係者は価格形成,実需者への販売と代金回収を担当するという分担関係になっていた。
4 このような背景において,卸売市場に販売を無条件委託する農協系統にとって,大量出
荷は有利販売のための重要な戦略として位置づけられたものと考えられる。
5 しかし,80年代に入って野菜の国内消費量は停滞から縮小に向かい,またライフスタイ
ルや食に対する価値観の多様化によって,野菜消費は多様化してきた。これにより,野菜
需要を細分化しターゲットの実需者を明確化する方がニーズに適切に対応できるようにな
ってきた。本稿で紹介した,市場細分化戦略に取り組む3つの中小規模の生産部会の事例
では,生産・流通システムにおいて生産部会や農協系統が果たす機能は,従来型の生産・
流通システムとは異なっている。
6 生産部会の機能についてみれば,従来型の生産・流通システムでは,出荷規模拡大,そ
のための技術の平準化と規格・基準の斉一化において機能を発揮している。これに加えて,
市場細分化戦略に基づく生産・流通システムにおいては,ターゲットである実需者ニーズ
に対応した栽培方法,多品目の品ぞろえや契約取引のシステムの確立,および実需者との
協力関係の構築においても機能している。これらの機能を発揮できた背景には,戦略に適
合的な部会員と組織形態が存在していることがあげられる。
7 農協系統が担っている機能についても,従来型の生産・流通システムにおける,営農指
導,集荷や分荷だけでなく,企画,生産部会組成,営業,宣伝,需給調整や債権管理等に
まで拡張している。それを支えているのは,農協と経済連・全農県本部との協力体制,経
験やノウハウを蓄積しそれを生かす仕組みである。
8 従来型の大量出荷戦略に基づく生産・流通システムから市場細分化戦略に基づく生産・
流通システムに移行するには,販売戦略の変更,既存の取引先との関係,生産者の意識,
新しい生産・流通システム定着にかかる時間とリスク等に関する諸課題を克服する必要が
あろう。

刊行年月日
2009年12月01日
著者/
研究者紹介
尾高   恵美 (オダカ メグミ) :調査第一部   主事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2009年12月号 第62巻 第12号 通巻766号  20 ~ 35ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2009/12/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):食品・フードシステム
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0912re2.pdf  100.4KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2152.html