書誌情報
論題:個人リテール金融をめぐる長期的な動向について-ビッグバン構想から13年を経て-
10.01.01[ 更新10.06.18 ]
- タイトル
- 個人リテール金融をめぐる長期的な動向について-ビッグバン構想から13年を経て-
- 要旨
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1996年11月に日本版ビッグバン構想が発表されてから約13年が経過したが,この間には様々な規制緩和や公的金融機関の改革などが行われた。ビッグバン構想以前と比較すると,協同組織金融機関を含めた銀行等の数は,合併等により大幅に減少したが,ゆうちょの民営化や住宅金融公庫の業務見直しによる資金シフトが発生し,民間銀行は預金,住宅貸付の残高を伸ばした。また,投資信託や保険商品等の銀行等における販売が解禁され,特に投資信託の販売においては銀行等が大きなシェアを占めるようになった。その結果,投資信託の販売に注力している銀行では,収益に占める販売手数料の割合も高まった。
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家計における投資信託等の市場性金融商品の保有率は上昇したが,株価の低迷が影響し,「貯蓄から投資へ」の動きは日本の家計の金融資産の構成を大きく変化させるには至っていない。家計の金融資産の約半分を占めているのは依然として預貯金である。預貯金のなかでも,ペイオフの全面的な凍結解除の影響等をうけて,流動性預貯金の構成比が大きく上昇し,08年度末には金融資産の2割を占めている。
また,金融商品の取引方法が広がり,コンビニエンスストアのATMやインターネット,携帯電話を利用する人の割合が増えてきた。そうした環境下でこれらのデリバリーチャネルを中心に取引を行う新しい形態の銀行も設立され,相対的に有利な金利水準を提示していることから,預金残高を急速に伸ばしている。
以上のことを総合すると,構成比だけをみると家計の金融資産は預貯金中心であることにかわりはないが,①定期性から流動性へのシフト,②金融商品の取引方法の広がり,③有利な商品を求めて新たな形態の銀行を利用する人が増えている等,預貯金の内容はビッグバン構想以前とは変わってきているとも考えられる。
民間銀行にとっては,公的金融機関改革の影響による多額の資金流入が期待しにくくなっているため,家計においてより大きな割合を占めるようになった流動性預貯金を自行内にとどめておけるよう,クレジットカード等も活用して利用者とのつながりを強め,家計のメイン化を進めていくことが重要になろう。 - 刊行年月日
- 2010年01月01日
- 著者/
研究者紹介 -
重頭 ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2010年01月号 第63巻 第1号 通巻767号 44 ~ 56ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2160.html