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書誌情報

論題:米国先物市場と農家のリスク管理―穀物価格高騰期における価格リスク管理の変調―

10.06.30[ 更新10.09.06 ]

タイトル
米国先物市場と農家のリスク管理―穀物価格高騰期における価格リスク管理の変調―
要旨

1 米国の穀物農家は,従来型の価格・所得支持政策による価格リスクの補填が,補助金水準の据え置きと生産費の上昇によって機能しなくなったため,先渡し取引や作物収入保険による価格リスク管理の利用を増やしてきた。これらの手段は先物市場に依存している。
2 農産物先物市場の価格形成はバイオ燃料政策や大規模な投機資金の流入により変化した。トウモロコシ価格と原油価格は密接に連動し(2008年),その相関の強さと持続期間の長さ,そして振幅の大きさは特異であった。インデックス投資は大幅な買い越しと持ち高の安定によって全般的な価格水準の押し上げに寄与し,マネージド・マネーは値動きに直接影響したと考えられる。
3 穀物集荷業者の先渡し取引に伴う先物ヘッジは,先物価格の上昇によって証拠金(追証)が膨らみ,08年春の所要運転資金は通常の数倍に達した。リスクの拡大と資金調達の困難から,先渡し取引の最長契約期間は短縮された。そのため農家は,作付けの時点で収穫物の販売価格を確定することが難しくなったうえ,肥料等の供給逼迫懸念から翌年の購入価格を予約し,経営上のリスクを抱えた。
4 綿花先物市場では08年3月3日に,オプション価格を根拠として値幅制限の4倍の追証が課された。実需で説明できない高値のため銀行から資金を調達できず,中小業者の一部は廃業し,大手業者の一部も綿花事業を縮小・撤退した。多くの当業者は,新規のヘッジおよび農家との先渡し取引を手控えた。CFTCの報告書(2010年1月公表)は,追証の拡大を懸念した綿花商社の買い圧力が値上がりの原因であったと結論した。
5 CBOT小麦先物市場では現物と先物の価格収束に不全を来たし,期近物のベーシス(シカゴ現物との価格差)は08年の前半から09年の初めにかけて1ドル以上となった。穀物業者など先物の売り手にとっては予期せぬベーシスリスクの拡大であった。一方,先物の買い手は船荷証券を保持し続けることにより荷渡し(損失)を回避し,かつ先物を売って利益を得ることが可能であった。上院小委員会の報告書(09年6月)はインデックス投資による先物価格の押し上げが価格収束不全の主な原因であると結論し,持ち高規制の免除を撤廃するよう求めた。同報告書によれば,先物を売って現物を保有する投資戦略(キャッシュ・アンド・キャリー)が有利となり,価格収束につながる裁定取引が十分に発生しなかった。
6 現物と先物の価格差が変動すると,作物収入保険の効率は低下する。
7 このように08年にかけての穀物価格高騰期には,実需から離れた先物価格の大幅な上昇によって,先物に依存した価格リスク管理手段の機能が損なわれた。リスク管理の必要性が高まったそのときに,拡大したリスクが先物市場から農家へ逆流したのである。
8 その後,議会による立法措置,規制当局の裁量による規制,取引所の規則改正の各段階で規制の強化が進行中ないしは検討中である。
<表記:米国(アメリカ)>

刊行年月日
2010年07月01日
著者/
研究者紹介
平澤   明彦 (ヒラサワ アキヒコ) 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年07月号 第63巻 第7号 通巻773号  16 ~ 35ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/07/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
第二分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):海外金融
キーワード
農産物プログラム,価格変動の拡大,スワップディーラー,フルキャリー,スコット・アーウィン,金融市場規制改革
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1007re2.pdf  263.0KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/22.html