書誌情報
論題:農協農業貸出伸長の今日的意義と課題
10.04.30[ 更新10.09.06 ]
- タイトル
- 農協農業貸出伸長の今日的意義と課題
- 要旨
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1 農協への批判は根強いが,ここ数年は,農協,農林中金の農業貸出比率が低いこと,リーマンショックで多大の有価証券評価損を発生したことに対する農林中金の資金運用のあり方に向けられている。
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2 農林中金は預金増加額に対して貸出機会が乏しく,海外での資金運用を余儀なくされてきたが,現時点で資金構造の抜本的変革を議論していくことは現実的ではない。しかしながら本来的分野である農業,地域に資金還元していくことは結果として農林中金に余裕金が集中する構造を若干なりとも緩和することになる。
3 農業貸出にかかる問題点・課題は多いが,大きくは次の5つに集約される。①事業評価の困難性解消のためのデータの蓄積・活用,②不動産担保貸出から脱却しての事業そのものを評価する金融手法の確立,③法人化等に対応してのエクイティファイナンスによるサポート,④情報提供機能・相談機能の強化,⑤借り手(農業者)と金融機関(農協等)とのコミュニケーション不足にともなう関係性の向上
4 こうした情勢に対応して,農林中金は経営安定化計画を策定し,経営の刷新に取り組んできているが,そのなかで農林中金自身の農林漁業金融の強化が打ち出されている。またこれと連動してJAバンク中期戦略が策定されており,「農業メインバンク・生活メインバンク」機能の強化を柱として,本来的事業基盤である農業金融サービス強化が最重点に位置づけられている。
5 これら取組みの基本は,認定農業者,集落営農組織,農業法人等多様な担い手の資金需要に対応していくところに置かれている。このために農協,信農連,農林中金,さらには関連会社等も総動員して,さまざまな金融メニューが用意され,担い手金融リーダーも設けられている。これらを活用して貸出伸長,農家経営収支の改善・向上につなげていくステージにきている。
6 実際に,農業貸出伸長の成果を獲得していくためには,存在意義や公共性の徹底,経済事業との連携強化を含めての大規模農家・法人対応の強化,農家経営管理支援システムの確立と農業金融センターの充実,訪問活動やPRの徹底による組合員とのコミュニケーション向上,人材育成と地域金融力の維持,経営トップの見識とリーダーシップ発揮等の条件整備が急がれる。併行して農協のあり方についての抜本的議論が必要とされる。 - 刊行年月日
- 2010年05月01日
- 著者/
研究者紹介 -
蔦谷 栄一 (ツタヤ エイイチ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 客員研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2010年05月号 第63巻 第5号 通巻771号 18 ~ 33ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):農協信用事業
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/3.html