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書誌情報

論題:農林水産分野の排出量取引の現状と課題

10.10.01[ 更新10.10.01 ]

タイトル
農林水産分野の排出量取引の現状と課題
要旨

1 世界各地に排出量取引市場が創設され,日本でも排出量取引市場の導入論議が進んでいる。農林水産分野においても温暖化対策は必要であり,排出量取引への参加もひとつの対策手段である。国内では現在,試行的に排出量取引が実施されているが,それはどのような仕組みの下で行われ,どのように農林水産分野がかかわることができるのだろうか。国内の排出量取引制度を概観し,そのなかで農林水産分野が温暖化対策に貢献できることは何かを明らかにする。
2 わが国には,環境省自主参加型排出量取引制度,試行排出量取引スキーム,国内クレジット,京都クレジットをまとめた国内統合市場と東京都排出量取引制度などの排出量取引市場と,カーボンオフセットを利用したオフセット・クレジット制度がある。そのなかでも,農林水産業が温暖化対策の取組みで参加できる制度は,国内クレジットとオフセット・クレジットの2つとなっている。
3 国内クレジットやオフセット・クレジットにおいて農林水産分野は,太陽光発電や化石燃料から木質バイオマスへの燃料転換などの「石油代替エネルギー・新エネルギー等の導入」や,コジェネレーションや空調,照明設備の新設・更新などの「石油代替資材・省エネルギー資材・設備等の導入」によって,これらの制度の温室効果ガスの排出削減を証明するクレジット(排出削減量証明)を得ることができる。
4 内閣府の京都議定書目標達成計画では,国内クレジットと森林吸収源の両方の利用が示されているため,国内クレジットで企業が森林吸収源を利用すると,内閣府の森林吸収源利用による数値目標達成と重複してしまう。そのため,企業が国内クレジットにおいて森林吸収源を利用することは認められていない。逆に,オフセット・クレジットは,京都議定書目標達成計画に組み込まれておらず,企業等による自主的な温室効果ガスの削減取組みであることから,吸収源対策の活用が認められている。
5 2013年以降の本格的な排出量取引の導入に向けた議論が進んでいるが,低炭素社会を実現するには,国から市民まですべての主体を取り込める包括的な制度設計が望まれており,国内クレジット制度のように農林水産分野が地球温暖化対策に貢献できる枠組み作りが求められている。

刊行年月日
2010年10月01日
著者/
研究者紹介
安藤   範親 (アンドウ ノリチカ) : リサーチ&ソリューション第2部   主任研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2010年10月号 第63巻 第10号 通巻776号  15 ~ 29ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2010/10/
第一分野
(大区分):経済・金融  (詳細区分):国内経済
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):環境
キーワード
排出量取引,クレジット,京都議定書,温暖化
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1010re2.pdf  151.9KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/3652.html