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書誌情報

論題:再生可能エネルギーと農山漁村の持続可能な発展―ドイツ調査を踏まえて―

13.04.01[ 更新13.04.01 ]

タイトル
再生可能エネルギーと農山漁村の持続可能な発展―ドイツ調査を踏まえて―
要旨

本稿は、農林中央金庫が2009年度から開設中の一橋大学寄付講義「自然資源経済論」プロジェクトが2012年の秋に実施した、南ドイツでの再生可能エネルギーに関する調査に基づいている。同調査が行われたのは、地域に豊富に賦存する再生可能エネルギー資源を利用して地域内の経済循環やエネルギーの自立を進めるドイツの事例が、自然資源経済のあり方を考える上で非常に重要であると思われたためである。
 ドイツでは、2000年に再生可能エネルギー法に基づいて再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入したことにより、2011年の実績で再生可能エネルギーの設備容量は約6.0倍、発電量は約3.1倍に増加し、総電力消費量の20.3%を占めるまでとなった。また、再生可能エネルギーの導入は、地域主導の小規模分散型で進んでいる点に大きな特徴がある。
 地域主導で再生可能エネルギーを導入する事例をみると、グロースバールドルフ村ではエネルギー協同組合、アシャ村は自治体、フュルト市は市民ファンド、マウエンハイム地区は株式会社の形態で事業が行われている。特に、協同組合や市民ファンド、株式会社はドイツで民間主導の再生可能エネルギー事業が行われる際に典型的な形態であり、これらがそれぞれの事業の特徴に合わせて使い分けられていることが、地域主導の再生可能エネルギーを活発化させる要因にもなっていると思われる。
 特にドイツでは、コミュニティが再生可能エネルギー設備を所有し、共同で運営・管理するのに適したエネルギー協同組合の設立が増加している。その設立数は近年加速的に増加しており、2006年から2011年までの累計で439組合にものぼっている。また、エネルギー協同組合が増加している背景には、地域の価値創造に適した組織であること、地域の合意形成を容易にすること、資金調達が容易になることなどが挙げられる。
 日本でも、協同組合が小規模分散型の再生可能エネルギーの担い手になることが期待されるが、日本では農協、生協などの種類別に協同組合法が制定されていること、日本には共通の監査連合会が存在しないこと、行政庁の認可が必要なことなど、多くの課題がある。地域主導で再生可能エネルギーを進める上で協同組合が重要な担い手であることは明らかであり、こうした課題について早急に議論を起こすことが必要になる。

刊行年月日
2013年04月01日
著者/
研究者紹介
寺林   暁良 (テラバヤシ アキラ) : リサーチ&ソリューション第1部   主事研究員
石田   信隆 (イシダ ノブタカ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等   客員研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2013年04月号 第66巻 第4号 通巻806号  38 ~ 53ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2013/04/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):環境
第二分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):海外協同組合
キーワード
自然資源経済論,自然エネルギー,バイオマス発電,太陽光発電,エネルギー協同組合,市民ファンド
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1304re3.pdf  983.1KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/4689.html