農林中金総合研究所

本稿では，イタリアの大規模青果農協が構築するネットワーク組織の構造と特徴を捉えた。
本稿が取り上げる二つの事例は，単協間の合併や青果加工事業の導入をめぐる共同出資会社＝コンソーシアムの設立を同時に進めてきたネットワーク組織である。これらネットワーク組織は，異なる組織構造を有しているほか，マーケティング戦略においても相違がみられた。イタリアにおいては，青果物の販売をめぐる競争が，産地，品目，事業領域が錯綜する農協ネットワーク間競争の様相を帯びている実態を垣間見ることができる。
そこで，単協にとって複数農協とのネットワーキングは避けられないなか，自らが打ち出す経営戦略とりわけマーケティング戦略は，専門農協の展開なかんずくネットワークの選択を方向づけるキーファクターであるほか，ネットワーク組織における議決権は，単協自らのマーケティング戦略をネットワーク組織に貫徹できる主要な手段であることを明らかにした。